1997 年 47 巻 2 号 p. 213-219
ネパール, カトマンズ谷における生物学研究の第一歩として, ヤドリギ類(ヤドリギ科Viscaceae, マツグミ科Loranthaceae)について, その分布高度, 宿主, 送粉者および種子散布者を, 1995年1月16日から5月15日にかけて調査した。カトマンズ谷は標高の高低差が1200-2700mと大きく, 様々なタイプの植生が存在し, すでに多種のヤドリギ類が報告されている。本研究の過程で9種のヤドリギ類が見いだされたが, うちDendrophtoe falcata, Macrosolen cochinchinensisはカトマンズ谷での初報告であった。9種のヤドリギ類のうち7種は広い範囲の高度に分布していた。ヤドリギ類の宿主として, 25科46種の樹木が確認された。さらに, 2種の鳥類, Aethopyga nepalensisとDicaeum ignipectusがヤドリギ類の花および果実にそれぞれ訪れているのが観察された。分布高度を限定する要因として, 宿主の分布と送粉者あるいは種子散布者の分布, という二つの可能性が考えられた。