植物分類,地理
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東亜蘚類考察
外山 礼三
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1937 年 6 巻 3 号 p. 169-178

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抄録

ミヤマクサゴケ(Heterophyllium brachycarpum (MITT.) FLEISCH.) ─ MITTENの種類と CARDOT の種類は,各々原産地は男体山,日光でよく産地のみならず種類の特徴が一致する.カキネゴケ屬(Palisadula TOYAMA) ─ Clastobryum に近いが蘇歯特異.屋久島産のものをタイプとする.FAURIE 師が対島で採し,Pylaisia (?) chrysophylla CARD. var. brevifolia CARD. と属に疑問を残してCARDOT が発表せる植物に一致する植物を高隈山で多量に採集す.之の蘇歯も亦同様の特異な構造をもつ.Pylaisia chrysophylla CARD. 及び Clastobryella shiicola SAKURAI と之の植物とは種としての区別は認め難いので欧文の如き組合を行った.Clastobryum として発表されている他の植物は,その原標本には全く子〓がない.之の属に移さるべきものも必ずあると思われる.タケウチカガミゴケ (Brotherella Takeuchii TOY.) ─ Clastobryum 属に見る如き孵芽を持つ点は前新属と同様面白い現象.カガミゴケ属と他の点は一致する.種名は採集者であり且つ植物地理学会に種々貢献されし竹内敬氏の名を頂いた.セイナンナガハシゴゴケ (Sematophyllum pulchellum (CARD.) BROTH.) ─ Meiothecium japonicum DIX. et SAK. として発表されしものの原標本を検するに蘇歯の構造は櫻井氏の図の如きではなく内歯を有し,且外歯は吸水の結果屈曲するがその屈曲点より〓々折れる為に,氏の図の如く見えるので,明に Sematophyllum 属のものである.セイナンナガハシゴゴケの原標本を検するに櫻井氏の種は完全に一致する.ニイタカサナダゴケ (Plagiothecium Niitakayamae TOY.) 〓 大変大きな,枝は丸く葉がつき,葉の先端細胞には盛んなる仮根や原糸体の出来ているのが見られる.ホソオカムラゴケ (Okamuraea flagellifera (SAK.) TOY.) ─ オカムラゴケ(ハヒオカムラゴケを含めて)とは営養生殖帯の相違により之と対立した位置におくべきものと考える.種名は櫻井氏により他の属で書かれているので変な名になった. フトフトゴケ (Schwetshkea robusta TOY. ) ─ 他のこの属のものよりはるかに大きい.Schwetsxhkea Doii SAK. に近いがずっと雄壮である.オホミミゴケ (Meteoriella soluta (MITT.) OKAM. ) ─ 屋久島を自身歩いて見て,今まで正体の不明なりし Pterobryopsis japonica CARD. 及び Meteoriella dendroidea SAK. が本種に他ならぬことを知った.樹皮に着生して,長くさがらないもののみを見ると明に変ったものと考えられるが,普通,移行,変体の三形を同時に認められる.葉その他に何等形態的変化が認められない故,型種とする必要もないと思う.

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© 1937 日本植物分類学会
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