2000 年 49 巻 12 号 p. 969-975
環境ホルモンの一つであるビスフェノールA(BPA)は,煩雑な前処理を経て,GC/MS等の機器により分析されている。この方法は高感度で分析ができる反面,測定に時間がかかり,技術的にも習熟を必要とするといった問題を有する。著者らはこのような問題を解決するため,有機溶媒耐性に優れたモノクローナル抗体を開発し,この抗体を用いて酵素免疫測定法(ELISA)によりBPAを測定する方法を検討した。その結果,50%メタノール中でも1ng/ml以下の検出感度を有する測定系を確立することに成功した。固相抽出法による前処理を組み合わせることにより,pptレベルの試料も測定可能であることが示唆された。また,ラットを用いたBPA体内動態解析にも本ELISA法が有用であることが分かった。本法では,簡便かつ低コストで短時間に多数の試料を高感度に測定できることから,BPA分析のダウンサイズ化が可能である。