分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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アルコール添加-高周波加熱法とガスクロマトグラフィー/質量分析法による油脂の脂肪酸組成比率の簡易分析
栗原 建二田上 文代
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2000 年 49 巻 7 号 p. 557-560

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抄録

油脂を代表する大豆油,あまに油などは複雑な脂肪酸組成を有するトリグリセリド混合物を主成分としているが,含有する脂肪酸組成比率を明確にすることは極めて重要である。従来の一般的前処理と分析法は,けん化法などにより前処理後,酸性溶液として脂肪酸を溶媒抽出し,メチルエステル化を行い,ガスクロマトグラフィーで分析を行っている。著者らは高周波加熱-熱抽出法を用いて油脂の前処理の検討を行った。液体油脂の数mgにアルカリ性メタノール溶液20μlを添加,255°Cで1分間熱抽出した。得られた抽出液をガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)で分析したところ,数種類の脂肪酸メチルエステルとグリセリンを検出した。これらは油脂を構成するトリグリセリドの脂肪酸エステル部分が,添加したメタノールと高温条件下でエステル交換反応を起こし,生成したものと推定された。以上から,油脂中のトリグリセリドを構成するアシル基部分をアルコール添加熱抽出法により,脂肪酸メチルエステルに変換することで,脂肪酸組成比率をGC/MS分析で容易に確認できることが分かった。

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© 2000 The Japan Society for Analytical Chemistry
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