2001 年 50 巻 12 号 p. 885-891
水中の微量AsIII及びAsVを分別定量するためのフローインジェクション/黒鉛炉原子吸光法を開発した. AsIIIは, ピロリジンジチオカルバミン酸錯体としてC18シリカゲルカラムに捕集し, エタノールにより溶離する. 溶出液の最大濃度部分を黒鉛炉にオンライン導入し, 原子吸光を測定する. AsVはMo-マラカイトグリーンとの会合体としてC18シリカゲルカラムに捕集する. 次いでジメチルスルホキシドを用いて会合体を溶離し, 溶出液の最大濃度部分の原子吸光を測定する. AsIIIの定量では試料量2mlを用い, AsVの定量では試料量4mlを用いることで, いずれも約20倍の濃縮倍率が得られ, 検出限界はAsIIIで0.042μg l-1, AsVで0.017μg l-1であった. 1時間当たりの試料処理数は, AsIIIでは約15, AsVでは約12である. 本法を湖沼水中のAsの定量に応用したところ, AsIII及びAsV共良好な結果が得られた.