分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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アセチルレゾルフィンとグルコースオキシダーゼからなる蛍光指示反応系を用いる血糖値測定
松浦 伸哉山内 雄二大森 秀信前田 初男
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2001 年 50 巻 7 号 p. 475-479

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抄録

過酸化水素によるアセチルレゾルフィン (ACR) の蛍光性化合物レゾルフィンへの変換反応 (ペルヒドロリシス) を指示反応として用いることにより, グルコースオキシダーゼ (GOD) のみを用いてグルコース分析ができることを最近著者らは見いだした. 本研究ではこの蛍光指示反応系の血糖値測定における有効性を評価した. 本手法の血しょう試料への適用は, 硫酸亜鉛/水酸化バリウムを用いる除タンパク操作並びに低濃度つまり10mMのリン酸緩衝液で調製したGOD溶液を用いることにより可能であった. そのGOD溶液の使用により, ACR共存下での除タンパク処理した試料の酵素反応中における析出物の生成が抑制されただけでなく, ACRのペルヒドロリシスを蛍光指示反応として用いる過酸化水素分析の感度が向上した. 本法はグルコース濃度0~250mg/100mlの範囲で良好な検量線 (相関係数, 1.000) を与えた. 血漿試料のグルコース分析は相対標準偏差2%以下で行うことができ, 本法が優れた同時再現性を有することが示された. 本法で得た血糖値は, トリンダー法により決定した値に比べて多少大きい値であった. アスコルビン酸の添加効果の評価及び回収試験を行った結果から, 両法で得た血糖値間の差はトリンダー法の確度の低さに由来することが示唆された. これらの結果並びにアセトニトリル中におけるACRの優れた液状安定性を考慮すると, GOD/ACR法が妨害物質の影響を受けにくい確度の高い血糖値測定法としての実用性を有していると考えられる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2001
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