分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
ピバロイルトリフルオロアセトンと1,10-フェナントロリンによる亜鉛 (II) の協同抽出の大きさに与える有機溶媒中の水の影響
松林 出稲垣 安紀子長谷川 佑子
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 50 巻 7 号 p. 487-491

詳細
抄録

亜鉛 (II) を1,1,1-トリフルオロ-5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン (ピバロイルトリフルオロアセトン, PTA) を含む有機溶媒又は1,10-フェナントロリン (phen) とPTAの混合溶液に抽出したときの分配比から, クロロホルム, 四塩化炭素, ヘキサン中でのZn(PTA)2のphen付加錯体の生成定数, β11=[Zn(PTA)2・phen]o[Zn(PTA)2]o-1[phen]o-1) を決定した. log β1を純溶媒中への水の飽和溶解度の対数値に対してプロットすると, 傾き-2の直線となった. これは, 付加錯体生成平衡は, 2分子の水が関与した平衡Zn(PTA)2・2H2O(o)+phen(o)Zn(PTA)2・phen(o)+2H2O(o), で表すことができ, この平衡定数は溶媒によらず一定であることを示す. 今回の結果は, 従来, 抽出にかかわる化学種の活量や溶媒の極性から説明されていた協同抽出の溶媒効果が, 化学量論的な化学平衡によることを示した.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2001
前の記事 次の記事
feedback
Top