2002 年 51 巻 9 号 p. 735-739
糖はその分子内に多数のOH基を有する有機物であり, 水溶液中で変旋光を示す. D-グルコースでは, 水溶液中で1位のOH基の立体配置に基づくα,β異性化が起こるため, 糖分子周囲の水和構造にも変化が生じると考えられる. 高周波分光法は, 溶液構造変化あるいは分子どうしの会合状態変化を鋭敏に検出することが可能である. 今回, D-グルコースのα,β異性化反応過程を高周波分光法により追跡し, 1800MHz付近の共振ピークが反応時間によってその吸収強度に変化が生じることを見いだした. 吸収強度変化は, 異性化反応時間との間に直線関係が成立し, 比旋光度変化との間にもよい相関が得られた.