抄録
本研究では,河川における重金属汚染状態を化学的視点と生物学的視点から解明することを試みた.石川県内にある旧鉱山下の河川において,堆積物を採取し,全分解と連続抽出を行い,銅の全含有量と堆積物と様々な形で結合している各成分中の銅含有量を測定した.また,礫石上の付着物中に珪藻群集を構成している種の同定を行った.その結果,重金属の全含有量に対する交換性成分(イオン交換できる化学種や炭酸塩等)の割合と,重金属に耐性があり重金属汚染の指標種となる珪藻種Achnanthes minutissima の相対優占度(全珪藻の個体数に対する各珪藻種の個体数が占める割合)との間に相互関係が見られた.交換性成分には藻類にとって毒性となる化学形の重金属が含まれており,これらが珪藻を含む河川の生物相に影響を及ぼしていると考えられる.