2004 年 53 巻 9 号 p. 911-917
本研究では,水性二相系高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)による無機化合物の分離を目的として,操作条件と分離性能の関係を検討した.HSCCC装置としてはJ型コイルプラネット向流クロマトグラフ,水性二相系としてはポリエチレングリコール(PEG)-Na2SO4系を用い,無機陰イオン(IO3-,I-,NO3-,SCN-)をモデル化合物として,二相系の組成,ドラムの回転速度及び移動相流量と分離度の関係を検討した.その結果,カラムを巻き付けたドラムの回転速度が大きいほど固定相保持百分率が減少したが,それにもかかわらず分離度は大きくなるという現象が観測された.理論段数を測定したところ,分離度の増加はほぼ理論段数の増加で説明できることが明らかになった.これは,回転速度の増加に伴って二相のかくはんが激しくなり,液滴が小さくなることによるものと推測される.一方,移動相流量は分離効率に大きな影響を与えなかった.得られた結果に基づいて最適条件を設定し,Cr(III) とCr(VI) の分離を試みたところ良好な分離結果が得られた.