分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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フローインジェクション分析法による鉄鉱石中の鉄の精密定量
渡辺 邦洋今里 直樹板垣 昌幸
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2005 年 54 巻 8 号 p. 693-699

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抄録
多量の鉄鋼原料の取引時には鉄成分の純度を有効数字4けた以上の精度で求められることが多い.従来はその要求にこたえるために滴定法で分析を行ってきた.しかし,滴定法による分析法は熟練を要し,簡便な方法が求められている.そこで,比較的精度の高い結果が得られるフローインジェクション法による鉄鉱石中の鉄を有効数字4けたの精度で分析する方法を開発した.最適フローシステムとして一流路を選択し,安定着色成分測定ではダンパーの使用により相対標準偏差(RSD)0.068% を確認した.また,化学反応のばらつきによる精度低下を避けるために,最適呈色試薬の選定に6けたの測定精度をもつストップトフロー法を利用した.これにより,従来安定とされていた鉄錯体の不安定性が比較され,結果として呈色試薬にタイロンが選定された.試薬濃度,pH,反応コイル長さ等の条件を選定し,鉄鉱石標準試料に本法を適用した結果,一部の試料では滴定法の精度に勝る結果が得られた.全体としては滴定法に若干劣るものの,有効数字4けたの精度を有する精密分析法を確立できた.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2005
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