分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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篤志観測船を用いる残留性有機汚染物質による地球規模海洋汚染観測システムの開発
功刀 正行藤森 一男中野 武
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2006 年 55 巻 11 号 p. 835-845

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抄録

残留性有機汚染物質による地球規模の海洋汚染の時空間変動及び化学動態を把握するために,商船を用いたはん用性の高い海洋観測システムを開発した.篤志観測船として,日本-ペルシャ湾間は油輸送船を,日本-オーストラリア間は鉱石運搬船を,それぞれ選定し,開発した観測システムを搭載し,観測及び試料採取を実施した.海水中の残留性有機汚染物質の捕集には固相抽出法を用い,固相抽出材としてポリウレタンフォーム,活性炭素繊維フィルター及びその複合材の回収率の検討を行った.試料採取は,開発した濃縮捕集システムを用い,100∼300 lの海水を固相抽出材を充填したカラムに通水することにより捕集した.検出限界はHCHsで1 pg/l,クロルデン類で3 pg/lと高感度であり,極めて低濃度である外洋域の観測に適応可能である.今回捕集したほとんどの試料からHCHs及びクロルデン類が検出され,特徴的なHCHの異性体パターンや水平分布が観測された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2006
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