2006 年 55 巻 6 号 p. 405-410
本研究では,化学的蒸着により作製したTiNコーティング炭化タングステン(WC)-Co超硬合金の残留応力を測定するためインプレーン回折方法を適用した.本法により,膜のみの回折像を基板からの影響をうけることなく得ることができた.はん用のX線回折計の場合,試料に対するX線の侵入深さは数μmであるが,表面すれすれのX線入射によって,約0.2 μmの深さの情報を得ることができる.それぞれの手法を組み合わせることで,膜の深さ方向の残留応力分布を評価することができた.また,結晶配向をもつ膜に対しても本手法は面内角が一定である本手法は,回折強度の不均一さの影響を受けにくいことが分かった.TiN膜には膜と基板の界面付近において機械的性質及び熱膨張率のミスフィットの影響による引張の残留応力が発生しており,その分布は深さによって異なっていることが分かった.