二酸化セリウム/イットリア安定化ジルコニア/シリコン(CeO
2/YSZ/Si)及びYSZ/CeO
2/Siヘテロ構造の配向性に及ぼす界面の構造と化学状態の影響を,高分解能分析電子顕微鏡によって明らかにした.いずれの積層においても幅10∼30 nmの柱状構造が観察されたが,その配向性は大きく異なった.YSZ/CeO
2/Siヘテロ構造においては,CeO
2層は(111)優先配向を示し,面内には配向を持たなかった.electron energy loss spectroscopy(TEM-EELS),energy dispersive X-ray spectroscopy(TEM-EDS)による界面近傍の分析の結果,CeO
2が還元された界面反応層とSiが酸化された界面反応層の存在が明らかとなった.CeO
2/YSZ/Siヘテロ構造においては,CeO
2層は優先的に(001)配向したが,YSZが薄いほうがCeO
2層の(001)配向性は向上した.(001)配向した領域のCeO
2/YSZ界面については,YSZ層が厚い場合,ミスフィット転位を伴った半整合界面を形成した.YSZ層が薄い場合,YSZ層の構造の乱れのために明確な界面構造は分からなかった.TEM-EDS分析の結果,Si酸化膜だけが存在した.膜厚が薄い場合でもYSZ層にはSi基板の結晶方位をCeO
2層に伝達する効果に加えて,Siに対して熱力学的に不安定なCeO
2の還元を抑制する効果があることが明らかになった.
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