分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
二次元高速液体クロマトグラフ精製法を用いる臭素化及び塩素化ダイオキシン及び類似物質の一斉異性体別定量
羽成 修康三宅 祐一堀井 勇一岡澤 剛山下 信義
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2006 年 55 巻 7 号 p. 491-500

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抄録
2種類の高速液体クロマトグラフ(HPLC)用カラム(porous graphitic carbon及びpyrenyl silica)を併用した二次元HPLC精製法と高分解能ガスクロマトグラフ/高分解能質量分析計を用いた高精度異性体分析により,既報において適用可能となった塩素化ダイオキシン類似物質だけでなく,臭素化難燃剤である臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs),臭素化ビフェニル(PBBs)及び臭素化ダイオキシン類(PBDDs及びPBDFs)の一斉異性体別定量法を開発した.本法は精密質量数が近接しており,分析精度の低下が問題となっているPBDEs とPBDFsの異性体分離を実現し,また,高質量化合物のため高分解能質量分析計では脱臭素化物のモニターしかできず,分析誤差の生じやすいPBDE IUPAC No. 209異性体についても,M+の検出が可能なガスクロマトグラフ/タンデム型質量分析計を併用し高精度分析を可能とした.PBDEs,PBBs及びPBDDs/DFsの検量線は2 pg(一部同族体では10 pg)から1000 pgの範囲で相関係数0.992以上を示し,繰り返し測定による相対標準偏差はPBDEsでは2.7から11.2%,PBBsでは2.0から11.7%,PBDDs/DFsでは5.9から12.5% と良い再現性を示した.更に本分析法の検証実験は大気汚染の長期的指標として有効性が確認されている常緑針葉樹葉及び国際精度管理試験用試料として配布された飛灰を用いて行い,クロマツ葉中の臭素化難燃剤の異性体別詳細分析データを初めて得ることに成功した.本法は既に塩素化ナフタレン(PCNs),塩素化ビフェニル(PCBs),塩素化ダイオキシン類(PCDDs及びPCDFs)において適用可能であることを報告しているため,同一試料中の有機ハロゲン(塩素及び臭素)化ダイオキシン類似物質の一斉毒性評価を可能とした.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2006
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