分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
放射光軟X線と光電子顕微鏡を組み合わせたナノメートルスケールの化学結合状態マッピング
平尾 法恵馬場 祐治関口 哲弘下山 巖本田 充紀
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2008 年 57 巻 1 号 p. 41-47

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抄録
固体表面のナノメートルスケールの局所分析においては,形状,元素分布,結晶構造だけでなく,化学結合状態(原子価状態)の分布を明らかにすることが重要となっている.化合物の内殻吸収ピークのエネルギーは同一元素であっても,化学結合状態によって変化する(化学シフト)ことが知られている.著者らはこれを利用し,エネルギー可変の放射光と光電子顕微鏡を組み合わせることにより,ナノメートルスケールの化学結合状態のみに依存したマッピング測定を行うための装置を開発した.同装置を使用しシリコン化合物の原子価状態マッピング測定に応用した.試料には,SiとSiO2が周期的に並んだマイクロパターンを用い,Si K-吸収端近くの放射光を照射したときの光電子顕微鏡像を測定した.光電子顕微鏡で得られた画像の各点における輝度の放射光エネルギー依存性から,それぞれの点におけるSiの原子価状態をナノメートルスケールで明らかにすることに成功した.また,加熱によりSiO2が横方向に拡散するようすをリアルタイムで観測し,Si-SiO2界面の化学結合状態変化を明らかにした.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2008
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