抄録
新規で実用的な分析手法の開拓を目的とし,メソポーラスシリカを用いた分子認識素子の開発やこれを用いたマイクロ分析デバイスへの応用を行った.メソポーラスシリカのナノサイズの細孔への分子吸着には,細孔径及びシリカ表面と吸着分子の間の相互作用が重要であることを解明し,ごくわずかなサイズ差の分子同士を数十倍の選択性で見分ける分子認識素子を実現した.この分子認識素子を利用して,微小化効果による利点を活かしたままベンゼンなどの有害ガスを数十倍の選択性で見分けるマイクロガス分析デバイスを開発し,排気ガスモニタリングなどの実環境で有用性を実証した.また,メソポーラスシリカがテラヘルツ領域において優れた光学材料となることを見いだし,テラヘルツ領域の波長帯に観測される分子間水素結合モードの影響を低減する分子認識素子を開発し,これを用いたテラヘルツ分光分析法を開拓した.