分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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法科学的異同識別を目的とした3次元偏光光学系高エネルギー蛍光X線分析装置を用いる布粘着テープの微量元素分析
後藤 彬子保倉 明子中井 泉
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2008 年 57 巻 9 号 p. 699-706

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抄録

高エネルギーX線を励起源とする3次元偏光光学系蛍光X線分析装置を用いて,犯罪に利用されることが多い布粘着テープの異同識別法の開発を試みた.検討の結果,識別に最適な分析条件は以下のとおりである.2次ターゲットとしてRhとAl2O3を用い,測定時間はそれぞれ300秒と600秒,分析に用いた元素はCa,Ti,Cr,Mn,Fe,Ni,Zn,Sr,Zr,Nb,Mo,Sb,Ba,Pbの14元素である.方法の有効性を検証するため,市販の布粘着テープ17社31試料へ応用した.糸密度と蛍光X線(XRF)スペクトルの14元素のピーク強度の組み合わせにより,31試料中29試料をうまく識別できることが分かった.識別できなかった2試料は同一起源のものと思われた.このように蛍光X線分析を用いる本方法は,非破壊で迅速,簡便であることから法科学的分析法として実用性が高いことが分かった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2008
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