分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「火」:報文
レーザーラマン分光法による火炎内のすす及び多環芳香族炭化水素の解析
小林 佳弘新井 雅隆
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2011 年 61 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

本研究では火炎中で生成されるすす及びその前駆物質である多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons, PAHs)の特性や挙動を調査するため直鎖系の液体燃料であるヘキサンによる層流拡散火炎を対象とし,その火炎中にKrFエキシマーレーザーを照射した.レーザー誘起蛍光(LIF)にてPAHsを,レーザー誘起赤熱発光(LII)にてすすを,またラマン分光分析によりすすのグラファイト構造を調べた.その結果,グラファイト構造(sp2結合)に起因するG-band及びグラファイト構造の構造欠陥などに起因するD-bandを検出することができた.そしてこれらの強度比G/Dから,火炎下流部に向かうほどすすのグラファイト構造化が進行していく様子も捉えることができた.また,すすの生成されていないPAHs生成領域中からもこれらのラマンバンドを検出することができ,G/D比からPAHsの成長過程を推測できた.さらに得られたG/D比と火炎温度の関係を調べた結果,温度とPAHs及びすすのG/D比の間には比例関係が成立することが示された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2011
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