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分析化学
Vol. 61 (2012) No. 6 p. 501-512

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http://doi.org/10.2116/bunsekikagaku.61.501

総合論文

脂質は生体膜の主要な構成成分であり,エネルギー源となるだけでなく,脂質メディエーターとして生体防御や神経伝達などにおいて重要な役割を果している.近年,ポストゲノムサイエンスおいて,細胞内にあるこれらの脂質代謝物を分析する手法として,液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)を用いた脂質メタボロミクス(リピドミクス)が注目されている.しかしながら,スフィンゴ糖脂質のような両親媒性で構造が複雑な微量成分の検出や,様々な極性代謝物の網羅的な分析技術については,十分に確立されていないのが現状である.本研究では,これらの課題を克服するために,それぞれターゲットもしくはノンターゲットLC-MS分析法の確立を試みた.その結果,理論拡張Multiple reaction monitoring(MRM) modeを用いたターゲットリピドミクスにより,スフィンゴ糖脂質の分子種レベルでの高感度な一斉分析が可能となった.また,レーザーマイクロダイセクション(LMD)と組み合わせることで,組織切片からの新たな局在グライコリピドミクスの手法を確立した.さらに,LC-MS分析及び二次元プロファイリング解析の組み合わせによるノンターゲットリピドミクスにより,総脂質から極性の高~低い脂質代謝物が分子種レベルで網羅的に分析可能となった.この手法の応用により,生体内でトリグリセリド(TG)が過酸化型TGでも存在することも新たに明らかになった.今後これらのリピドミクス技術を社会問題であるアルツハイマー,がん,肥満などの疾患に臨床応用することで,早期診断マーカーの発見や病態の解明につながることが期待される.
* Selected reaction monitoring(SRM)も同義

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