分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「空」:報文
黄砂や工事に由来するエアロゾル増加を検出する確率論的手法の検討
岡田 匡史藤井 修二林 譲
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2013 年 62 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

本研究では,黄砂の飛来や工事による大気中のエアロゾル個数濃度の増加をリアルタイムで検出する確率論的手法を検討した.そのために,エアロゾル個数濃度の時系列データをマルコフ過程とホワイトノイズの和の確率過程モデルで近似することにより検出限界を求めた.検出限界以上の値は理論的には,通常では低確率(0.1%)でしか起こらないエアロゾル個数濃度の増加であるため,検出限界を増加の検出・非検出を判別するしきい値とした.エアロゾル個数濃度の時系列データは時刻(朝と昼など)によりその確率論的性質が大きく変動し,これに従って検出限界も大きく変動する.また,本研究のモデルに含まれないスパイクノイズやシグナルが実際の時系列データに出現することも検出限界を変動させる.そこで,適切な検出限界を設定するために以下の手法を検討した; a)検出限界を推定する領域の経時的なシフト,b)この領域からスパイクノイズ及びシグナルの除去,c)検出限界以上の変動の段階的評価.これらの手法を用いることにより,黄砂の飛来や工事による土壌の舞い上がりを早期に検出,判別できることを示した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
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