分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
ジフェニルカルバジドの低濃度アセトン溶液を用いる簡易型2流路フローインジェクション法によるクロム(VI)の定量
辰巳 美紀尾崎 成子中村 栄子
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 62 巻 1 号 p. 31-35

詳細
抄録

ジフェニルカルバジド発色に基づくFIA法はこれまでにも多数報告され,また,2011年3月にはJIS K 0170-7流れ分析法による水質試験方法第7部として規格化された.これらの方法に用いられているジフェニルカルバジド溶液のアセトンやエタノールなどの濃度,ジフェニルカルバジド濃度,酸濃度は色々である.本研究では,送液部,サンプル注入部,反応部及び検出部が一体化された低価格の簡易型FIA装置を用いてJIS法の2流路FIAの条件を再検討した.その結果,発色溶液のアセトン,ジフェニルカルバジド,硫酸のいずれの濃度もJIS法の2流路FIA法でのそれらより低く,ジフェニルカルバジドで約1/2,硫酸で約1/3,アセトンで約1/10であった.この条件でも次に示すようにJISのFIA法と同等の定量が可能であった.この方法で直線範囲を示す濃度範囲は,0.005~5 mg L−1(相関係数R2: 0.9998)とJISのFIA法のそれと同じであり,0.005 mg L−1及び0.1 mg L−1での繰り返し精度(n=5)はそれぞれ3% と0.2% であり,JISのFIA法より良好であった.また,3σから求めたこの方法での検出限界は0.4 μg L−1であった.合計流量及び1時間の測定試料数は,本法で0.85 mL min−1,18試料/時間,JISのFIA法で1.0 mL min−1,24試料/時間であった.この方法を土壌環境基準の溶出量試験及び含有量試験検液での添加回収実験に適用した.含有量試験検液には着色が見られたが,ジフェニルカルバジドを含まない溶液で試料ブランクを測定してそれを差し引く方法で,いずれの場合もほぼ100% 近い回収率が得られた.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
前の記事 次の記事
feedback
Top