分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
GC-MS用ポータブル型キューリーポイント試料導入装置の開発
大栗 直毅武田 珠余遠藤 誠土屋 俊雄
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 62 巻 3 号 p. 223-227

詳細
抄録

熱分解-GC分析と発生ガス-GC分析に使用することができるポータブル型キューリーポイントプローブを開発した.このプローブは,マイクロシリンジでGC-MSに液体試料を導入する方法と同様の方法で,試料をGC-MSに直接導入することができる.従来型の熱分解装置はGC注入口の上部に固定したものが一般的であり,その設置には,装置の取付けとGC-MS安定化のために数時間を要する.これに対して開発した装置は,機械的な取付け操作が不要で直ちに試料を導入することができる.この装置はキューリーポイント加熱法を採用しているため,加熱炉の昇降温が急速で加熱時間が15秒と短いためプローブの表面温度はほとんど上昇しない.このことからオペレーターは火傷する危険が少なくプローブを操作することができる.この装置にはコールドスポットがないため,ポリエチレンの熱分解-GC分析では,炭素数72の高沸点化合物まで検出できる.また,熱分解-GC分析時及び発生ガス-GC分析時の相対標準偏差(RSD)が,それぞれ1.0% 以下の値及び10.0% 以下の値が得られた.同様に両分析時の定量分析の検量線を求めたところ,直線関係が成立した.揮発性ガス分析装置の応用例として,カメムシが発する防御ガスの組成分析を行った.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
前の記事 次の記事
feedback
Top