分析化学
Print ISSN : 0525-1931
62 巻, 3 号
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総合論文
  • 渡邉 卓朗, 加藤 健次, 前田 恒昭
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 62 巻 3 号 p. 183-198
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    トレーサビリティを確保し不確かさが付与された標準物質を開発するには,多くの時間と費用を必要とする.国際単位系(SI)にトレーサブルな標準物質の開発を簡易に行うことを目的として,反応による物質変換の技術を用いる研究を行い,新たな装置とその校正方法を開発した.ガスクロマトグラフ(GC)のカラム出口と水素炎イオン化検出器(FID)の間に酸化反応部と還元反応部を直列に組み込んだ装置では,優れた結果を得ることができた.この装置は,導入した試料成分をカラムで分離後,二酸化炭素に酸化し,直後にメタンへ還元しFIDで検出する.数種類のSIトレーサブルな標準物質を混合調製して本装置で測定し,メタン換算濃度とピーク面積値から関係線を求め直線となることで,反応系の反応効率を検証するとともに,装置の校正を行う.この関係線を用いて標準物質と異なる成分を含んだ試料を本装置で測定し,分離した成分すべての定量を行う.この新たな値付け法は,SIトレーサブルな標準物質の開発がより容易に行える画期的な方法である.
報文
  • 中釜 達朗, 篠原 謙輔, 内山 新士, 角川 淳, 曽 湖烈, 中嶋 秀, 内山 一美
    原稿種別: 報文
    2013 年 62 巻 3 号 p. 199-206
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    ヘリウムラジオ波プラズマ(RFP)を用いたインチューブマイクロプラズマトーチ(in-tube MPT)内蔵のガスクロマトグラフィー(GC)用原子発光検出器(AED)を試作した.in-tube MPTは白金製接地電極管(内径0.3 mm,外径0.5 mm)を白金製高圧RF側電極管(内径0.8 mm,外径1.0 mm)に0.5 mm挿入して作製した.光ファイバー先端を高圧側電極内に挿入,固定し,後端を小型CCD分光器に接続した.接地電極にはメークアップガス,キャリヤーガス及び測定対象物質蒸気の混合ガスを導入するためのGC用石英キャピラリーを接続した.試作したAEDは市販のGCに搭載して測定に供した.含硫黄化合物としてチオアニソールを用い,測定波長921.3 nm,印加電力2 W,印加周波数230 kHz及びメークアップガス流量14 mL min-1でGC-AED測定を行ったとき,ブランク測定の標準偏差(σ)と検量線の傾き(a)から求めた硫黄の検出下限(D=3.3 σ/a)は4 pg s-1と推算された.含リン化合物としてリン酸トリエチルを用いた場合,測定波長253.4 nm,印加電力3 W,印加周波数230 kHz,メークアップガス流量12 mL min-1のとき,同様の推算方法により求めたリンの検出下限は22 pg s-1であった.
  • 埴原 鉱行, 筒井 拓也, 近 亮
    原稿種別: 報文
    2013 年 62 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    住居空間に漂うニオイは極微量であり,一般的にトイレの糞尿臭やキッチンの生ゴミ臭はメチルメルカプタン,トリメチルアミン,インドールなどがキーとなる臭気成分として知られている.しかし,寝室にこもるニオイの臭気成分を調査した報告はなく,消費者の意見ではほとんどが「ニオイがこもった感じ」と回答している.そこで,本研究では,被験者の負担の少ない静置式の固相マイクロ抽出(SPME)4種類とガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)を組み合わせ,家庭の寝室にこもるニオイの実態調査を行った.その結果,家庭の寝室に存在する臭気の共通成分として,C2-9脂肪酸,C9-10アルデヒド,メチルケトンを同定した.これらの臭気成分は,家庭で使用していた枕カバーや肌シャツより検出されることから,寝室にこもるニオイの実態は,人が使用した寝具などに付着した不飽和脂質が酸化分解した化合物であると推測した.
技術論文
  • 中村 貞夫, 代島 茂樹
    原稿種別: 技術論文
    2013 年 62 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    固相マイクロ抽出(SPME)-ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)による1,4-ジオキサン,エピクロロヒドリン,2-メチルイソボルネオール(2-MIB)及びジェオスミンの一斉分析法の検討を行った.SPMEファイバーは,その細孔が1,4-ジオキサンやエピクロロヒドリンのような分子量の小さい化合物に対する吸着力が強いcarboxen(CAR)と汎用性のあるpolydimethylsiloxane(PDMS)を組み合せたものを用いた.本法は,各対象成分の厚生労働省における基準値/目標値の10分の1(1,4-ジオキサン 5 μg L-1,エピクロロヒドリン 40 ng L-1,2-MIB及びジェオスミン 1 ng L-1)の検出が可能であり,その濃度における繰り返し再現性(n=6)は2.0~7.7% であった.1,4-ジオキサン 1~100 μg L-1,エピクロロヒドリン 40~4000 ng L-1,2-MIB及びジェオスミン 1~100 ng L-1の範囲で,良好な直線性を得た.水道水に1,4-ジオキサン 10 μg L-1,エピクロロヒドリン 400 ng L-1,2-MIB及びジェオスミン 10 ng L-1となるように各対象成分を添加し,精製水添加の実験値と比較すると95.7~104.6% で,繰り返し再現性(n=5)はRSDで1.4~2.4% であった.
  • 大栗 直毅, 武田 珠余, 遠藤 誠, 土屋 俊雄
    原稿種別: 技術論文
    2013 年 62 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    熱分解-GC分析と発生ガス-GC分析に使用することができるポータブル型キューリーポイントプローブを開発した.このプローブは,マイクロシリンジでGC-MSに液体試料を導入する方法と同様の方法で,試料をGC-MSに直接導入することができる.従来型の熱分解装置はGC注入口の上部に固定したものが一般的であり,その設置には,装置の取付けとGC-MS安定化のために数時間を要する.これに対して開発した装置は,機械的な取付け操作が不要で直ちに試料を導入することができる.この装置はキューリーポイント加熱法を採用しているため,加熱炉の昇降温が急速で加熱時間が15秒と短いためプローブの表面温度はほとんど上昇しない.このことからオペレーターは火傷する危険が少なくプローブを操作することができる.この装置にはコールドスポットがないため,ポリエチレンの熱分解-GC分析では,炭素数72の高沸点化合物まで検出できる.また,熱分解-GC分析時及び発生ガス-GC分析時の相対標準偏差(RSD)が,それぞれ1.0% 以下の値及び10.0% 以下の値が得られた.同様に両分析時の定量分析の検量線を求めたところ,直線関係が成立した.揮発性ガス分析装置の応用例として,カメムシが発する防御ガスの組成分析を行った.
  • 中村 貞夫, 山上 仰, 小野 由紀子, 東房 健一, 代島 茂樹
    原稿種別: 技術論文
    2013 年 62 巻 3 号 p. 229-241
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    選択イオン検出/全イオン検出(SIM/Scan)同時取り込みモードを用い,Scanで十分な感度が得られない農薬のみSIM測定を行い,その他の農薬はScanで測定することで,高感度な一斉分析の農薬数を増やすことが可能であった.農薬305成分について,およそ3分の1(111成分)をSIMで測定することで,濃度0.02 ppm(標準溶液)の検出が可能であった(4成分は除く).そのメソッドを用いて,農薬305成分について代表的7作物からの添加回収試験(添加濃度0.05 ppm,n=3)を行った.前処理は,厚生労働省通知一斉試験法に従い,約8割の農薬は良好な回収率(70~120%)であった.さらに,できるだけ多くの農薬を簡単にスクリーニングするために,National Institute of Standards and Technology(NIST),Automatic Mass spectral Deconvolution and Identification Software(AMDIS)のデコンボリューション機能を利用した.429成分のデータベースを用いることで,スクリーニングを自動化し,AMDISの条件を絞り込むことにより確度の高い結果が得られた.
ノート
  • 武井 義之, 古野 正浩
    原稿種別: ノート
    2013 年 62 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    A novel system based on continuous gas-liquid counter-current flow extraction has been developed to determinate trace volatile organic components in aqueous samples. Under different conditions, the gas-liquid partition of 2-methylisoborneol and geosmin is theoretically described using this system. The results demonstrate that their mass transfer can be achieved at a level of the theoretical values; therefore, its extraction efficiencies are far higher than those of purge-and-trap (PT). To resolve problems with time-consuming of the headspace having a multi extraction-trapping mode, this methodology is also applied to an on-line monitoring system of musty odor substances in river water. Finally, the novel system is capable of determining musty odor substances in river water with high turbidity, and volatile organic compounds in aqueous samples, such as milk and beverages containing foaming substances, although applying the PT system is difficult for these samples.
  • 秋山 賢一
    原稿種別: ノート
    2013 年 62 巻 3 号 p. 249-252
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    Automobile exhaust is considered to be an important emission source of air pollutants; it is thought that measurements of Hazardous Air Pollutants (HAPs) concentrations are important for the reduction of HAPs in atmospheric environment. Proton Transfer Reaction/Mass Spectrometry (PTR/MS) has been applied for measurements of HAPs in the atmospheric environment, because of high sensitivity detection in real time. Then, PTR/MS was investigated concerning a possibility of being used for on-line-real-time measurement of the HAPs exhaust from automobiles. Gasoline was analyzed in combinations of GC and PTR/MS, and it was clearly shown that a few interference ions are generated from other compounds. Moreover, automotive exhaust concentration measurements become difficult due to a reduction of emission concentration, it is very important to know the availability that the sub ppb order compounds can be detected by PTR/MS.
  • 杉田 和俊, 松本 真理子, 稲葉 洋平, 遠藤 治, 内山 茂久, 欅田 尚樹
    原稿種別: ノート
    2013 年 62 巻 3 号 p. 253-257
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/04/02
    ジャーナル フリー
    This research examined gas chromatograph/mass spectrometer (GC/MS) measurements for nicotine and 4-ethenylpyridine, which are passive smoking markers of environmental tobacco smoke. Since the object ingredient was a polar compound, a comparison examination was performed using both a non-polar column (DB-5) and a mid-polar column (DB-17) for analysis. Of the two columns, as a result of comparing the peak shape, sensitivity, and linearity, it was found that DB-17 is suitable for measuring nicotine and 4-ethenylpyridine, which is a substitute compound of 3-ethenylpyridine. When the nicotine concentration determined by the GC/MS method was compared with that of the GC/FID method, which was the regulating method, the concentration as determined by the GC/MS method was about 30% lower than that of the GC/FID method. It was suggested that measurements by GC/FID include other organic components. When tobacco smoke (the gaseous and particle components of mainstream smoke and sidestream smoke) was measured using this GC/MS condition, nicotine was detected in all samples, except for the gaseous component of the mainstream smoke, and 3-ethenylpyridine was only detected in the gaseous component of sidestream smoke.
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