分析化学
Print ISSN : 0525-1931
分析化学総説
ドーピング検査における天然型ホルモンの由来識別
植木 眞琴
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2014 年 63 巻 3 号 p. 161-169

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抄録

スポーツ界では,フェアプレイを徹底し選手の健康を守るため化学物質や不正手段によって競技力を向上させるドーピングを禁止しており,世界的レベルで厳しい検査が行われている.瞬発力を増強する興奮剤などの古典的なドーピング物質に加え,近年ヒト体内に存在する内因性ホルモンなどの天然型生理活性物質を用いるドーピングが主流になっており,それらを検知するための由来識別法が種々検討され検査に用いられている.ドーピングに用いられる内因性物質で医薬品として流通するものには男性ステロイドホルモン,ペプチドホルモン,血液成分などがあり,それぞれに適した由来識別戦略に基づく検査が必要となる.中でもオンライン接続されたガスクロマトグラフィー(GC)同位体比質量分析法は,個別ステロイド分子の安定同位体比が測定でき,GC質量分析計で得られたメタボローム解析結果と比較しやすいことから,男性ホルモン本体,プロホルモン,ステロイド代謝物及びその類縁体の由来識別に用いられている.ここではドーピング分析における安定同位体比分析を中心に,由来識別の全体像について解説する.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2014
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