分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
放射光X線分析による科学捜査のための重鉱物及び重元素の日本全国河川堆積物データベースの開発
前田 一誠古谷 俊輔黄 嵩凱阿部 善也大坂 恵一伊藤 真義二宮 利男中井 泉
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 63 巻 3 号 p. 171-193

詳細
抄録

著者らは日本全国の3024か所から採取された河川堆積物の重鉱物及び重元素組成に基づいた法科学土砂データベースの構築を行っている.実験は放射光施設SPring-8にて行われ,各試料について,高エネルギー放射光蛍光X線分析(HE-SR-XRF)と放射光粉末X線回折測定(SR-XRD)を行い,それぞれ重元素組成,重鉱物組成のデータを取得している.両手法は自動試料交換システムを搭載し,わずか数mgの土砂試料を用いて24時間で130試料ほどの測定を行うことができ,データベース構築のための膨大な試料数の測定を可能としている.重元素組成分析では116 keVの単色X線を用いたHE-SR-XRFにより,希土類元素を含むCsからWまでの微量重元素に対して,検量線法にて定量を行った.本研究で得た定量値を分布図化することで,日本全国の重元素分布図の構築も進めている.重鉱物組成分析はカメラ長286.5 mmの大型デバイシェラー光学系を採用し,入射X線に波長1.0 Åの単色X線を用い,イメージングプレートによって試料からの回折X線を記録した.また同定された鉱物の特徴的な回折X線ピークの強度を用いた土砂中の重鉱物組成の定量的な評価法を開発した.本研究では千葉,甲府,静岡及び四国地方を実例として挙げ,重元素・重鉱物組成データにより犯罪現場から得られる土砂証拠資料の起源推定が可能であることを示した.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2014
前の記事 次の記事
feedback
Top