2015 年 64 巻 11 号 p. 811-819
アミノカルボン酸型キレート樹脂における錯形成能,吸脱着速度及び元素選択性の改善を目指し,各設計因子の捕捉特性への影響を精査した.基材樹脂の親水化及びスペーサを介して配位子の導入により,配位子本来の錯安定度定数の序列と一致した捕捉特性が得られた.この知見を基に,カルボキシメチル化ポリエチレンイミンを配位子とするキレート樹脂を開発した.多座配位が可能な官能基構造の採用により捕捉可能pH範囲を拡大すると共に,アルカリ土類金属元素を捕捉しないという特徴的な捕捉機能を達成した.このキレート樹脂を環境水や尿中の金属元素の固相抽出に適用したところ,アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の妨害を受けずに対象金属元素を効率良く抽出可能であった.また,カルボキシメチル化ポリエチレンイミンをレーヨンと混合紡糸した繊維状金属元素吸着剤も開発し,上記特徴的捕捉機能が繊維状金属元素吸着剤においても発現することを確認した.