グラファイト粉末と低粘度流動パラフィン等のバインダー液体を混合して調製した液状炭素を電極として用い,ポーラログラフィーを行った.液状炭素はシリンジポンプにより送液し,炭素滴をキャピラリーの先端から水溶液中へ吐出させた.これを作用電極とし,フェロセンカルボン酸(FcCOO−)についてポーラログラフィーを行った結果,明瞭な限界電流をもつFcCOO−の1電子酸化波が観察された.対数プロット解析を行うと,炭素滴が小さいときほどオーム降下の影響が小さくなり,傾きが可逆波の理論値に近づいた.限界電流値の濃度依存性からIlkovic式に基づいて求められたFcCOO−の拡散係数は,白金ディスク電極でのサイクリックボルタンメトリーから求められたそれとほぼ同程度であり,Ilkovic式が炭素滴電極にも近似的に適用可能であることが示された.正側及び負側の電位窓,ならびにゼロ電荷電位についても検討した.