分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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関東甲信越における土壌中放射性セシウムの化学形態モニタリング
越智 康太郎藤井 健悟萩原 健太大渕 敦司小池 裕也
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2017 年 66 巻 3 号 p. 175-180

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抄録

事故により福島第一原子力発電所の原子炉内から放出された放射性セシウム(134Cs, 137Cs)は,福島県から北関東を中心に降下し,奥羽山脈に代表される標高の高い山々を境に,土壌における沈着量に有意な差異が見られたことが報告されている.本研究では,福島第一原子力発電所からの距離が等しい関東甲信越の二つの地点で土壌を採取し,土壌中放射性セシウムのモニタリングを,事故以前,事故直後,事故から数年後という三つの期間で行った.加えて,逐次抽出法による土壌中放射性セシウムの化学形態別分析を,事故直後,事故から数年後に行うことで,その挙動について中長期的な評価を行った.モニタリングの結果,2011年以降は福島第一原子力発電所事故由来の137Csが検出され,その化学形態が不溶性であるFe, Mn酸化物態または残留物態であったことから,その濃度に大きな変動は見られなかった.また,137Csの化学形態は対象地点の土壌の鉱物組成により異なることがわかった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2017
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