分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「粒」: 報文
多重検出器型ICP質量分析計を用いたナノ粒子の元素・同位体分析
平田 岳史山下 修司鈴木 敏弘石田 未来
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2019 年 68 巻 2 号 p. 81-88

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抄録

ICP質量分析計は金属ナノ粒子の高感度かつ高速な計測手法の一つである.本研究では多重検出器型ICP質量分析計に高時間分解能型イオン検出システムを組み合わせることで,個々のナノ粒子から195Pt/194Pt同位体比及び元素比(Au/Pt比)の分析を試みた.まずサイズの異なるPtナノ粒子から195Pt/194Pt比を測定した.得られた同位体分析精度は統計誤差が支配的であり,ナノ粒子から得られる短時間信号からでも同位体分析が可能であることがわかった.次に液中レーザーアブレーション法(LAL法)を用いて合成したPt-Auナノ粒子のAu/Pt比を本装置で分析を行ったところ,回収されたPt-Auナノ粒子のサイズやAu/Pt元素比がレーザー照射条件(フルエンス)により変化することが明らかとなった.多重検出器型ICP質量分析法は複数の同位体信号を同時に測定する場合でも高い実効積分効率(duty cycle)が得られるため,複数の元素からなる複合系ナノ粒子のサイズ分布分析や元素・同位体組成分析に有効な分析手法になるものと期待できる.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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