2019 年 68 巻 4 号 p. 227-239
海水中の無機ヨウ素は,ヨウ化物イオン(I−)とヨウ素酸イオン(IO3−)として存在している.それらのイオンクロマトグラフィー(IC)とキャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)による測定を検討した.ICでは低イオン交換容量(0.03 meq. mL−1)の強塩基性ポリメタクリレート系陰イオン交換カラム,高濃度塩化ナトリウム溶離液,紫外(UV)検出器を用いて,海水試料中I−の直接UV測定を報告した.分離カラムとして陽イオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウム陽イオン(CTA+))を平衡吸着させた逆相系オクタデシルシラン(ODS)カラム(CTA+吸着─ODSカラム)を用いるとIC-UV測定が可能であった.IO3−はオフラインでI−に還元してUV測定した.イオン交換容量が大きい疎水性のポリマーカラム(>3.7 meq. g−1)あるいはCTA+吸着─ODSカラムでは,大量の海水試料中I−の濃縮が可能であり,高感度検出(μg L−1レベル以下)が達成できた.ドデシルアンモニウム陽イオン(DA+)を吸着させたDA+吸着─ODSカラムを用いたICでは,I−とIO3−とともに亜硝酸イオン(NO2−),硝酸イオン(NO3−),臭化物イオン(Br−)の測定が可能であり,分離機構を考察した.実試料として瀬戸内海水を用い,海水の動態を考察した.過渡的等速電気泳動前濃縮法を併用したキャピラリーゾーン電気泳動法(tITP-CZE)ではI−の検出感度はμg L−1レベル以下であった.I−とIO3−の分別測定,IO3−のI−へのオンキャピラリー還元による測定が可能であった.有機ヨウ素をI−として分解後,他の無機ヨウ素も含め全ヨウ素を測定した.多成分の陰イオン検出が可能であった.北部太平洋で採取した実試料に対してヨウ素の深度別測定を適用した.