分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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シリンジフィルターを分離濃縮デバイスとして用いる水中微量ヒ素のオンサイト比色定量
村居 景太本多 宏子奥村 浩岡内 俊太郎
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2019 年 68 巻 7 号 p. 465-472

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抄録

市販のシリンジフィルターを前濃縮のための抽出デバイスとして利用する手法を設計し,水試料中の微量ヒ素(III, V) を現場で比色定量する方法を開発した.ヒ素を,チオ硫酸ナトリウム及びピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウムと反応させて疎水性のヒ素(III) 錯体としたのち,手動での加圧ろ過によってシリンジフィルター上に捕集した.これを溶離するため,硫酸酸性で過マンガン酸カリウム,モリブデン(VI) 及び銅(II) を含む少量の溶離液を当該フィルターに通液した.すなわち,捕集されたヒ素がモリブドヒ(V) 酸として溶離したので,溶出液にスズ(II) を添加してモリブデン青を生成させ,目視比色法あるいは吸光光度法で検出した.シリンジフィルターは抽出デバイスとして利便性が高く,現場分析に適していた.フィルターの材質はガラス繊維が最適であり,小さい圧力損失で定量的な回収率が得られた.試料水量を30 mL,溶離液量を1.7 mLに設定し,12分間の全所要時間で環境基準0.01 mg L−1が判定可能であった.本法を土壌浸出水試料に適用し,ICP-AESと比較して良好な結果を得た.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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