2020 年 69 巻 10.11 号 p. 531-537
統合失調症は約100人に1人が発症する比較的頻度の高い精神疾患である.幻覚・妄想などの特徴的な症状に加えて,意欲が低下し感情が鈍麻する,認知機能が障害されるなどの症状があり,社会生活に支障が出ることが多い.統合失調症の病因・病態には,複数の遺伝的要因と環境要因の関与が考えられているが,分子メカニズムにはいまだ不明な部分が多い.近年,統合失調症の病因・病態に酸化ストレス(カルボニルストレス)や小胞体ストレスの関与が示唆さており,それらストレスによるタンパク質の「質」の低下(凝集化などによる機能低下)が注目されようになった.本稿では,統合失調症の基礎知識から研究方法について紹介したのち,細胞内ストレスに注目して,統合失調症で見られるタンパク質の「質」の変化について概説する.