分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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年間特集「質」: 分析化学総説
  • 豊島 学, 蒋 緒光, 小川 覚之, 廣川 信隆, 吉川 武男
    原稿種別: 年間特集「質」: 分析化学総説
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 531-537
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    統合失調症は約100人に1人が発症する比較的頻度の高い精神疾患である.幻覚・妄想などの特徴的な症状に加えて,意欲が低下し感情が鈍麻する,認知機能が障害されるなどの症状があり,社会生活に支障が出ることが多い.統合失調症の病因・病態には,複数の遺伝的要因と環境要因の関与が考えられているが,分子メカニズムにはいまだ不明な部分が多い.近年,統合失調症の病因・病態に酸化ストレス(カルボニルストレス)や小胞体ストレスの関与が示唆さており,それらストレスによるタンパク質の「質」の低下(凝集化などによる機能低下)が注目されようになった.本稿では,統合失調症の基礎知識から研究方法について紹介したのち,細胞内ストレスに注目して,統合失調症で見られるタンパク質の「質」の変化について概説する.

年間特集「質」: 総合論文
  • 一ノ瀬 尊之, 中山 明弘, 白瀧 絢子, 藤崎 一幸, 飯田 豊, 平岡 勇二, 佐藤 信之
    原稿種別: 年間特集「質」: 総合論文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 539-551
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    メタロミクス(Metallomics)は,生命活動における微量金属元素の機能と役割を統合的に理解する研究領域であり,金属元素の検出手段としては誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)が広く用いられている.著者らは,多原子イオン干渉回避の点で,より信頼性の高い磁場型二重収束ICP-MSを用いることにより,血中微量元素の多元素同時分析法を開発した.さらに,本法を用いた臨床展開として,微量元素と疾病の因果関係を解明すべく,心疾患及び腎疾患患者血清の多元素網羅解析を行った.本稿では,これらの研究成果をICP-MSの最新の進歩とともに紹介する.また,ICP-MSでは,試料導入にレーザーアブレーション(Laser Ablation)を用いた複合化技術(LA-ICP-MS)により,元素の位置情報を取得することができる.著者らが実施したLA-ICP-MSによる生体微量金属元素イメージングの応用例とその最新動向についても紹介する.

年間特集「質」: 報文
  • 今崎 龍之介, 近藤 啓太, 谷 夏海, 青木 元秀, 熊田 英峰, 内田 達也, 長縄 豪, 嶋田 泰佑, 田口 嘉彦, 佐藤 浩明, 安 ...
    原稿種別: 年間特集「質」: 報文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 553-558
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    薄層クロマトグラフィー(TLC)における分離場のミニチュア化(薄膜厚の低減と展開長の短縮),なかでも薄型化は,希少・微少量の試料での分析が求められるオミックス研究において不可欠である.しかし,TLCの薄型化により,展開溶媒が薄膜からより一層蒸散しやすくなるため,再現性が低下することが危惧される.そのため,ミニチュア化TLCに特化した周辺ツールが必要となるが,そうした環境が十分に整備されていないのが現状である.そこで本研究では,TLCの信頼性と再現性を確保するために,誰にでも確実かつ簡便に溶媒飽和と展開を行える密閉性に優れたミニチュアTLC展開槽(50 mm角と25 mm角のプレート用)の作製を試みた.試作した展開槽の評価については,まずは一般的なシリカゲルTLCガラスプレート(薄膜厚200 μm)を用いて行った.試作した水平式ミニチュア展開槽が市販の縦型二槽式展開槽(100 mm角のプレート用)と遜色のないTLC分離を行えることを示すとともに,本ミニチュア展開槽では,槽内の空間体積を極力抑えたことにより,溶媒飽和に要する時間や展開溶媒の使用量をこれまでの1/3程度に削減できることを確認した.さらに,超薄層プレート(薄膜厚<10 μm)でも本展開槽を適用できるか検証するため,水熱合成法により薄膜厚が5 μmの酸化亜鉛製のナノワイヤアレイプレートを作製し,本展開槽によるTLC分離を試みた.酸化亜鉛製のナノワイヤに適した展開溶媒に関しては,まだ試行錯誤の段階であるが,ニュートラルレッドやナイルレッド等の合成色素を再現性よく分離できることを確認した.試作した水平式ミニチュアTLC展開槽は超薄層クロマトグラフィー(UTLC)を実施するための有力なルーツとなりうることが期待される.

  • 田口 秀之, 宮澤 悠介, 癸生川 陽子, 小林 憲正
    原稿種別: 年間特集「質」: 報文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 559-565
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    XPSは,化学状態解析が可能であり,試料を構成する化合物の解析を行ううえで非常に有用な分析法である.一方,得られる情報深さは10 nm程度以下と非常に浅く,表面情報を得るには優れているが,より深い領域の分析を行うためには,アルゴンイオンによるスパッタリングを併用する必要がある.しかし,スパッタリングの併用は,試料によっては化学状態の変化などダメージを受けることが知られている.先行研究において,酸化ジルコニウムはスパッタリングによりダメージを受けないとの報告があるが,ジルコニウム系化成皮膜については報告例がない.そこで,塗装下地をはじめ防錆(せい)皮膜として広く活用されている,ジルコニウム系化成皮膜を構成する化合物の解析にXPSを活用するため,ジルコニウム系化成皮膜に対するアルゴンイオンビームによるスパッタリングダメージの有無について検討した.その結果,ジルコニウム系化成皮膜についても,アルゴンイオンビームによるスパッタリングダメージがないことが確認された.

  • 鈴木 俊宏, 三浦 勉, 山内 喜通, チョン 千香子, 朝海 敏昭, 大畑 昌輝
    原稿種別: 年間特集「質」: 報文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 567-575
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    37種類の金属標準液及び12種類の非金属イオン標準液について,長期保管での安定性を評価した.標準液の容器は,標準液の種類に応じて樹脂製またはガラス製のものを使用し,樹脂製容器をアルミラミネート袋に密封した場合も検討した.また,保管条件は室温保管と冷蔵保管とを検討した.安定性試験では,容器内の溶液質量及び標準液の対象元素またはイオンの濃度(質量分率)をモニタリングした.モニタリングした溶液質量は,溶媒の蒸発により減少傾向が見られたため,その減少速度から濃縮の影響を評価した.また,モニタリングした溶液質量と濃度(質量分率)との積として,標準液の対象元素またはイオンの容器内質量を算出し,その保管期間に対する依存性を評価することで対象元素またはイオンの安定性を評価した.これら二つの評価結果を考慮して,各種標準液を長期保管したときの安定性の不確かさを評価した.

年間特集「質」: 技術論文
  • 御船 星, 岡田 将太, 岩井 貴弘, 吉田 真優子, 岡林 識起, 宮原 秀一, 沖野 晃俊, 千葉 光一
    原稿種別: 年間特集「質」: 技術論文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 577-584
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    近年の地球温暖化などの環境問題の解決策として,使用時にCO2を排出せず多様な製造方法がある水素エネルギーが注目されている.その一方で,燃料電池自動車用の水素ガスの品質規格は厳しく制定されており,特に触媒毒であるSは総濃度が0.004 ppm以下と低く設定されている.従来行われてきたガスクロマトグラフィーによる分析では,Sが化学形態ごとに分離されるため,総S濃度の測定は困難である.そこで本研究では,簡便で高感度なS不純物分析のために,マイクロホローカソード放電プラズマを用いた発光分光分析装置の開発を行った.本研究で開発した分析装置は,Sを濃縮するための試料濃縮部,Sを励起するためのプラズマ発光部,Sの発光強度を測定する分光検出部から構成される.本実験装置に0.02〜1.0 μLのSを導入して分析を行ったところ,このS濃度範囲で高い定量性が得られた.また,得られた検量線のバックグラウンド発光強度に相当するS量(4.8 nL)から算出すると,0.004 ppmのSを含む水素ガスの品質評価に必要な水素ガス量は1.2 Lである.この結果は,本研究で開発した分析装置を用いることで,少量の水素ガスから品質評価を行うことが可能であることを示している.

報文
  • 横谷 憲, 糟野 潤
    原稿種別: 報文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 585-592
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    プラスチックフォームドカーボン(PFC)を作用電極とする三電極システムを用いて,アノーディックストリッピングボルタンメトリー(ASV)によるNi(II) の定量分析を試みた.PFC電極を2500 rpmで回転させながら0.01 mol L−1 NaSCNを含む0.1 mol L−1 KCl水溶液中でASVを行ったところ,0.5〜10 μmol L−1の範囲でNiの再酸化に起因するピーク電流(Ip)はNi(II) 濃度に比例し,定量下限は1.7 μmol L−1であった.一方,NaSCNのかわりに1 μmol L−1 Bi(III) を0.1 mol L−1 KCl水溶液に添加して同様にASVを行ったところ,Ipが約2倍上昇した.電着電位,電着時間,回転速度及び掃引速度がIpに及ぼす影響を調査し,それぞれ−1.6 V, 900 s, 2500 rpm及び200 mV s−1が最適であると判断した.これらの条件下で10〜100 nmol L−1 Ni(II) の濃度範囲でASVを繰返し3回測定したところ,IpはNi(II) 濃度に比例し,相関係数はR2=0.9922であった.また,10, 25, 50あるいは100 nmol L−1 Ni(II) で得られた相対標準偏差は,それぞれ38.1, 5.7, 3.4あるいは6.1% であった.定量下限は26 nmol L−1であり,水道水質基準に対して10倍の感度でNi(II) を定量できる条件を明らかにした.

ノート
  • 島村 千尋, 陣内 意康, Satrio KUNTOLAKSONO, 廣瀬 雅輝, 佐藤 進, 松浦 宏昭
    原稿種別: ノート
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 593-597
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    In this work, we describe the absolute quantitative analysis of a chlorine dioxide (ClO2) based on a batch injection coulometry. The oxidation/reduction waves between ClO2 and the chlorate ion (ClO3) in the cyclic voltammogram could be observed by using a carbon felt electrode in an acidic medium. The electrochemical performance for the electrode oxidation of ClO2 has successfully been applied to the batch injection coulometric determinations of ClO2 in water. The typical current response vs. time curve was measured by the repetitive determination of ClO2, and the measurement of ClO2 was fully completed in a short time (∼20 s). The relative standard deviation (RSD) for fifteen successive measurements was found to be 2.98 %, indicating the good reproducibility of batch injection coulometric determinations. The oxidation current was actually increased as the sample solution volume increased. This fact indicates that the current response was generated by the electrode oxidation of ClO2. The electrical charge was proportional to the concentration range from 3 to 1000 ppm with a good linearity. The experimental value of the electrical charge for the electrode oxidation of ClO2 corresponding to the theoretical value of the electrical charge for the electrode oxidation of ClO2. Thus, the electrolysis efficiency for the ClO2 is expected to be nearly 100 % because extremely rapid determination is realized. Herein, our proposed batch injection coulometry is proven to be very promising for ClO2 measurements without calibration curves for sensor in practical applications.

アナリティカルレポート
  • 工藤 なつみ, 及川 真司, 日下部 正志
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 599-606
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    Chemical and physical factors were measured in bottom sediments taken in coastal waters around Japan. They include concentration of 137Cs, stable elements, particle size distribution, organic carbon, nitrogen contents and density. Intercorrelations among the factors were calculated in order to study the relationship between the concentration of 137Cs and the physical and chemical factors of bottom sediments. Significant correlations (r > 0.8) existed between the 137Cs concentration and some factors such as total organic carbon, 75 μm passing rate and specific surface area in samples taken in areas without any impact of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station accident. However, the sediment samples taken in the waters off Miyagi, Fukushima and Ibaraki Prefectures, where accident-derived 137Cs was found, did not show any good relationships between 137Cs and any other factors, suggesting that newly added Fukushima-derived 137Cs, which was unevenly distributed in seawater, deposited onto the sediment irrespective of the pre-accident relationships among the chemical and physical factors.

総合論文
  • 水野 裕彬, 福原 学
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 607-617
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    高圧分光分析法は,等方的な静水圧等による加圧により摂動を受けた原子・分子の分光学的測定法である.溶液の静水圧効果に限っていえば1960年代頃から報告されてきてはいるが,進展著しい近年の機能性分子類の圧力効果についてはまだまだ未開拓であろう.特に,超分子系では体積変化(ΔV)が大きいことが容易に予想できるため,加圧によってこれまでにない物性を引き出せると考えられる.このような考えに基づき,著者らは,静水圧を印加した機能性分子や超分子類の高圧分光を測定した.ΔVが大きい系においては,溶媒和に基づくコンフォメーション変化を観測することができた.また,本分光分析法を分子認識系,指示薬,感圧センサーへと適用範囲を拡大した.この結果,静水圧変化に伴う分子内から分子間に至るΔVや,基底状態から励起状態過程までをも包括的に制御できた.本稿では,著者らが最近行ってきた高圧分光分析の結果について紹介する.

報文
  • 堀田 拓摩, 浅井 志保, 今田 未来, 松枝 誠, 半澤 有希子, 北辻 章浩
    原稿種別: 報文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 619-626
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    90Sr分析の迅速な前処理分離を可能とするため,基材表層部へ吸着層を形成可能な放射線乳化グラフト重合法により,Sr吸着性を示す18-クラウン-6エーテル誘導体を担持したSr分離用吸着繊維を開発した.常温で液体のSr吸着分子を繊維表面に担持させることにより,前報で作製したSr分離材料と比較してSr吸着容量が大幅に向上した.このSr吸着繊維の平衡吸着容量は,同一のSr吸着分子を含浸する市販の粒子状のSr分離材料(Sr Resin®)と比較しても遜色なかった.また,Sr吸着分子の本来の金属イオン選択性は維持されていた.この吸着繊維を用いた簡易的な90Sr分析法を考案し,90Srの吸着性能を評価したところ,Srの吸着操作から測定までを約1時間で完了することが可能であった.

技術論文
  • 米沢 仲四郎, 山口 耕作, 荒川 史博, 望月 学, 宮澤 恵美
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 627-637
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    Ge検出器─γ線スペクトロメータのピーク効率校正に使用する,U8容器放射能標準線源の線源厚測定法とその不確かさ評価法を検討した.標準線源と同じ仕様のU8容器20個の寸法を詳細に測定し,線源厚測定に必要な基準面の高さと蓋止め幅を明らかにした.標準線源と同じ仕様のU8容器とアルミナで作製した模擬線源を使用して,線源厚測定法を検討した.充填厚が約5〜約50 mmの範囲で,アルミナ充填量を0.09% 以内で一致させて作製した任意の厚さの模擬線源各10個の充填厚を測定し,その実験標準偏差からタイプA評価の標準不確かさを求めた.確立した方法で線源厚と不確かさを測定・評価した標準線源によってGe検出器─γ線スペクトロメータを校正し,線源厚の不確かさによる分析対象核種131I,134Cs,137Cs及び40Kが放出するγ線ピーク効率への寄与を明らかにした.

ノート
  • 田口 秀之, 宮澤 悠介, 癸生川 陽子, 小林 憲正
    原稿種別: ノート
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 639-645
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    XPS (X-ray Photoelectron Spectroscopy) is a surface-sensitive analytical method that is performed in an ultra-high vacuum. Therefore, the samples should be carefully fixed with metal masks, plates, and screws, avoiding contamination. However, since powder samples cannot be fixed by these methods, they are while usually fixed with double-sided tape. The double-sided tape is convenient, but it has a weak point, that carbon from the tape is detected due to limited amounts of samples. Therefore, various fixing methods for powder samples have been examined, including JIS standard methods in this paper. It was found that the Al pan pressing method was the most stable and convenient fixing method for powder samples.

アナリティカルレポート
  • 加賀谷 重浩, 橋本 崇志, 北森 一範, 源明 誠
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2020 年 69 巻 10.11 号 p. 647-651
    発行日: 2020/10/05
    公開日: 2020/10/17
    ジャーナル フリー

    The sorption of inorganic mercury(II) was investigated using a solution containing organic compound. The presence of acetic acid and sodium acetate up to 0.2 mol L−1 as the total acetate concentration scarcely affected the sorption of mercury(II) by adding 100 mg of ground iron(II) sulfide to 100 mL of the solution, and then stirring the suspended solution. The effect of 50 v/v % of methanol, 30 v/v % of ethanol, acetonitrile, and N,N-dimethylformamide, or 1.0 v/v % of ethylenediamine was also not significant. Although the presence of acetone at 30 v/v % moderated the decrease in the mercury(II) concentration, the effect was not observed at 10 v/v %. The method for the sorption of mercury(II) with iron(II) sulfide, in which the operation is much simple, was applicable to the removal of mercury(II) in a real wastewater containing acetate.

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