2020 年 69 巻 4.5 号 p. 209-217
分析化学においては,測定対象となる試料成分の吸着や濃縮あるいは妨害成分の除去など,吸着剤の役割は多い.吸着剤を管に充填し,その中にキャリヤーとなるガスあるいは液体を送り,分析種やそれ以外の成分の吸着と脱離を連続的に繰り返しながら行う分離精製法をクロマトグラフィーと呼ぶ.クロマトグラフィーではキャリヤーとなるガスあるいは溶媒,試料成分,そして吸着剤の間で動的な物質移動が行われることから,吸着剤の形状やサイズも分析の性能として大きな影響をもたらす.著者らはクロマトグラフィーで一般に使用されてきた真球状粒子と異なる形状を示すモノリス型シリカに着目し,分離媒体としてクロマトグラフィーへの利用を進めてきた.本稿では,モノリス型シリカの構造的特徴とともに,気体成分から生体高分子に至る多様な化合物の分離分析へ向けたモノリス型シリカの開発状況について紹介したい.