分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
TG-DTA-MSを用いる蛇紋石系アスベストの定性分析の検討
澤木 大介古谷 泰英山﨑 淳司
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2021 年 70 巻 6 号 p. 385-395

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抄録

建築部材等に蛇紋石系アスベストが含まれるかをTG-DTA-MSにより確認する方法を検討した.TG-DTA-MSによりm/z=18のサーモMSイオングラムを求めた結果,蛇紋石系アスベストであるクリソタイルは600℃ 台前半をピークとして結晶水が揮発すること,一方,非アスベスト蛇紋石であるリザルダイトとアンチゴライトは,それぞれ500℃ 台及び700℃ 以上をピークとして結晶水が揮発することが確認された.これを踏まえ,実際の建築部材等の試料のm/z=18のサーモMSイオングラムを求めたところ,結晶水の揮発温度領域をもとに,どの蛇紋石が含まれるかを判定することが可能であった.建材製品中のアスベストの定性・定量に関する公定法であるJIS A 1481-2, 3ではXRDにより定性と定量を行うが,XRDではクリソタイルと非アスベストである他の二つを識別することが難しいため,アスベストを含有しない試料を含有と判定したり,含有率を過大評価する可能性があった.TG-DTA-MSにより求めたm/z=18のサーモMSイオングラムに基づく判断は,このような誤りを検出できることが示された.

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© 2021 The Japan Society for Analytical Chemistry
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