分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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総合論文
  • 茅根 創, 山本 将史, 朝海 敏昭
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 301-308
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    地球温暖化の将来と抑制策の鍵となる,海洋の炭酸系の計測可能な四つのパラメーターpH, pCO2, 全炭酸,全アルカリ度の計測技術の現状をまとめた.採水試料を実験室でバッチ計測する技術を,センサーによる現場観測,さらに自律したブイやフロートで自動計測する技術に改良して,点と線の観測から立体・経時観測することが求められる.実用的な計測における最良の精確さは,pH, pCO2, 全炭酸,全アルカリ度それぞれ,0.002 pH, 2〜5 μatm, 2〜4 μmol kg−1, 2〜3 μmol kg−1である.自動計測が実用化されているのはpHとpCO2だが,どちらも炭酸系の極微量成分で,同期して変化するため,これら二つから全炭酸と全アルカリ度を計算すると,それらの計算値の不確かさは,実測値の不確かさより大きくなる.精確に炭酸系を決定することができるpHと全アルカリ度の自動計測システムの開発が期待される.どのパラメーターも,試料試薬を添加したり,気体透過膜でCO2を液相に抽出したのちに,液相のpHを計測することによって求めることができるので,高圧の深海の海水でも安定的なpH計測技術の開発が鍵である.

  • 吉村 義隆, 塩谷 圭吾, 小林 憲正, 佐々木 聰, 山岸 明彦
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 309-326
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    近年の宇宙科学研究の進展に伴い,宇宙における生命の存在が科学的に議論されるようになってきた.約40億年前の火星表面には大量の水が存在した.当時の火星は生命が誕生した頃の地球と似た環境であったと推測され,火星にも生命が誕生した可能性がある.現在の火星においても,メタンなどの微生物のエネルギー源や有機物などが見つかっており,生命が生存している可能性がある.金星では,地表から55 km上空の雲の中からホスフィンが検出された.金星でホスフィンが生成される物理化学プロセスが知られていないことから,生命の存在が議論されている.地球以外の生命を検出する方法には,探査機に検出機器を搭載し現場で分析する方法と,試料を地球に持ち帰って分析する方法がある.後者は,実験室の大型機器を使って様々な分析法を行える利点がある.しかし地球に持ち帰れる試料には限りがあることから,現場で生命の兆候を検出することは重要である.本論文では,主に現場での検出法について,これまでに行われてきた生命探査を振り返るとともに,生命兆候の指標となりうる物質と,その分析方法を概観し,将来の生命探査法を考察する.

  • 田村 真治, 今中 信人
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 327-334
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    迅速かつ精度よく一酸化炭素(CO)を検知可能なガスセンサの開発を目指し,優れた酸素貯蔵放出能・酸化物イオン伝導性・酸化還元特性を示すCe0.68Zr0.17Sn0.15O2.0にPtを担持した触媒を用いた接触燃焼式センサを作製したところ,極めて低温の70℃ で精度よくCOを検知できるセンサの開発に成功した.また,熱伝導材料である窒化アルミニウムをセンサ材料として組み合わせることで,低温作動に伴う応答速度の悪化を改善できることが明らかとなった.さらに,Ce0.68Zr0.17Sn0.15O2.0の優れた酸素供給能は,Ptの代わりにLaCoO3をCO酸化活性種とした触媒においても優れたCO酸化能を実現し,同触媒を用いたセンサが130℃ で作動することが明らかとなった.

  • 森田 雅宗, 大田 悠里, 野田 尚宏
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 335-340
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    バイオテクノロジーや生命の起源において重要な存在である微生物は,地球上における様々な環境下で生息している.極限環境と考えられているような場所でも微生物は生存することが可能であり,それは細胞内という閉鎖された微小空間という非常に特殊な環境下でも生存可能である.著者らは,油中水滴型ドロップレットや脂質ベシクルという大きさが十〜数十マイクロメートルと細胞と同程度のスケールで細胞内と同様に閉鎖された微小空間内部で,微生物を培養し,その動態を解析する技術の開発を行っている.本論文では,細胞と同スケールの微小空間を特殊・極限環境と見立て,これまでに開発してきた微生物の培養と分析・検出技術について紹介する.新規の微生物培養・スクリーニング技術としてバイオテクノロジー分野への有用性を議論し,さらに将来的には,生命の起源において重要な細胞内共生モデルの研究などにつなげる可能性についても議論する.

  • 内藤 豊裕
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 341-349
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    分析を必要としているその場で分析・診断を行うオンサイト分析は,環境保全や,人々の安全や健康を維持するうえで重要な技術であり,2015年に採択された持続可能な開発目標に設定されている目標のひとつである.どこでも,誰でも使える分析装置という観点から,高額・大型・特殊な装置を必要としない分析手法の開発は必須である.ここでは,Poly(dimethylsiloxane)(PDMS)鋳型の酸素透過性と,酸素ラジカルによる重合阻害の影響を受けにくいチオールエン系光硬化性樹脂を利用した積層造形によって,ハンディーUVランプだけで作製可能な3次元造形法,電気浸透流ポンプと分子インプリント技術とを組み合わせて作製された,ポンプ,カラム,検出器の機能を持つ小型デバイス,音データによって小型装置の動作を制御する技術について論じる.

  • 野口 直樹
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 351-362
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    高圧下での固体中の水素の自己拡散は,実験的な研究手法が限られており,その素過程については不明な点が多い.そこで,ダイヤモンドアンビルセル(DAC)と顕微ラマン分光法による同位体定量分析技術を組み合わせることによって,数万気圧を超える高圧力下での固体の水素拡散係数を測定する方法を開発した.この方法により,20 GPaまでの氷や水酸化物の水素拡散係数の圧力依存性を調べた.本論文においては,技術的な解説を行うのと同時に,いくつかの研究例についても紹介し,明らかになった高圧下での水素拡散の素過程や,高圧水素拡散係数の惑星科学研究への応用についても説明する.

報文
  • 米持 真一, 堀井 勇一, 小西 智也, Ki-Ho LEE, Yung-Ju KIM, 畠山 史郎, 大河内 博
    原稿種別: 報文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 363-371
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    PM2.5の長距離輸送を解明するため,2017年夏季に富士山頂(標高3776 m)で昼夜別にPM2.5の採取を行い,44試料を得た.水溶性イオン8成分と無機元素成分68元素の分析を行った.水溶性イオンではNH4とSO42−が全イオン合計濃度の67% を占めており,日中(D)が夜間(N)より1.3倍高かった.無機元素のうち1/2以上の試料で検出下限値以上の測定値が得られたのは17元素(Na, Mg, Al, K, Ca, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, As, Sr, Pb)であった.水溶性イオンも含めた21成分について濃度変動の類似性を調べた結果,相関係数(r)≥0.7となった組合せは,日中(D)は土壌,都市汚染,大陸からの長距離輸送を示唆していたが,夜間(N)は長距離輸送のみが優勢であった.As/V比が0.9以上となった4期間はすべて夜間(N)であり,後方流跡線は大陸方面から気塊が直接輸送されたことを示していた.人為起源のV*が上昇した3期間はすべて日中(D)であり,後方流跡線はすべて関西圏と中京圏上空を通過していた.またAs/V*比はこれら地域のPM2.5中As/V比とも整合していた.富士山頂で昼夜別の試料採取を行うことで,長距離輸送の影響をより明瞭にとらえることができた.

  • 板垣 吉晃, 森 雅美, 定岡 芳彦
    原稿種別: 報文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 373-378
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    電気泳動堆積法(EPD)を用いて微小Au櫛型(くしがた)電極上に半導体膜を形成し,NO2ガスに対する応答特性を評価した.検知材料にはSmFeO3を用い,シアノ錯体を500と900℃ で熱分解することで調製した.SmFeO3粒子の懸濁液の液滴中で電気泳動させることにより,Au櫛型電極上に選択的に検知膜を形成することができた.NO2に対する応答は,作動温度の低下とともに増加し,250℃ で最大となった.また,高表面積が得られた500℃ 熱分解SmFeO3を用いた素子において高い応答性が得られた.特に,500℃ 熱分解SmFeO3の堆積膜を600℃ で焼結した場合,10 ppm NO2に対してS=96の非常に高い応答を示し,かつ0.2 ppmの低濃度NO2に対しても有意な感度が得られることが分かった.

技術論文
  • 浅野 比, 前田 大志朗, 白石 幸英
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 379-383
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    高選択性樹脂カートリッジを用いた固相抽出による六価クロム(Cr(VI))の濃縮とMicrofluidic paper-based analytical device(μPAD)を組み合わせたCr(VI)の高感度定量法を開発した.μPADにはCr(VI)の発色試薬としてジフェニルカルバジドを担持させておき,呈色したμPADの画像解析から強度を求め,Cr(VI)の定量を行った.μPADへの試料溶液の滴下体積について検討した結果,滴下体積の増加に伴い強度も直線的に増加し,感度の向上がみられた.共存成分の影響について検討を行ったところ,Ba(II),Ca(II),Cu(II),Fe(III),Mg(II),Ni(II) 及びPb(II)がCr(VI)の10倍の濃度で存在しても,定量への影響はみられなかった.Cr(VI)濃度0〜20 μg L−1の範囲で,決定係数0.9978の良好な直線の検量線が得られた.検出限界及び定量下限はそれぞれ,1.3 μg L−1及び4.3 μg L−1であった.本法を河川水及び水道水へ応用したところ,共存物質の影響もみられず,Cr(VI)は定量的に回収され,本分析法の有用性が示された.

  • 澤木 大介, 古谷 泰英, 山﨑 淳司
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 6 号 p. 385-395
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    建築部材等に蛇紋石系アスベストが含まれるかをTG-DTA-MSにより確認する方法を検討した.TG-DTA-MSによりm/z=18のサーモMSイオングラムを求めた結果,蛇紋石系アスベストであるクリソタイルは600℃ 台前半をピークとして結晶水が揮発すること,一方,非アスベスト蛇紋石であるリザルダイトとアンチゴライトは,それぞれ500℃ 台及び700℃ 以上をピークとして結晶水が揮発することが確認された.これを踏まえ,実際の建築部材等の試料のm/z=18のサーモMSイオングラムを求めたところ,結晶水の揮発温度領域をもとに,どの蛇紋石が含まれるかを判定することが可能であった.建材製品中のアスベストの定性・定量に関する公定法であるJIS A 1481-2, 3ではXRDにより定性と定量を行うが,XRDではクリソタイルと非アスベストである他の二つを識別することが難しいため,アスベストを含有しない試料を含有と判定したり,含有率を過大評価する可能性があった.TG-DTA-MSにより求めたm/z=18のサーモMSイオングラムに基づく判断は,このような誤りを検出できることが示された.

ノート
  • 家田 曜世, 高澤 嘉一, 橋本 俊次
    原稿種別: ノート
    2021 年 70 巻 6 号 p. 397-402
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2021/07/29
    ジャーナル フリー

    A method combined with sampling technology using a semi-active air sampler (SAAS) that uses PDMS as the collection material and analysis by TD-GC × GC-HRToFMS was developed for the purpose of implementing countermeasures against chemical substances remaining in the atmosphere, and the collection characteristics and applicability of persistent organic pollutants in the atmosphere by the developed method was evaluated. SAAS is small, light, easy to carry, and can be driven by dry batteries for 2 weeks, so there are few restrictions on the sampling location. It is also cheaper than the traditional high volume air sampler (HVAS) and has excellent versatility, such as observations at multiple points. Furthermore, unlike a passive sampler, the sampling flow rate can be calculated, so it is thought that the concentration can be estimated by validating applicable compounds. In this study, air sampling was performed at National Institute for Environmental Studies by SAAS using polydimethylsiloxane (PDMS) and by conventional HVAS. The concentrations of organohalogen compound obtained by two sampling techniques were compared. As a result, although it was difficult to collect compounds with high vapor pressure such as pentachlorobenzene with the SAAS using PDMS, it could be applied to compounds with the vapor pressure of PCBs from nonachlor. In the future, collecting agents other than PDMS will be considered, and we would like to build a system that can handle a wide range of physical properties by combining multiple collecting agents.

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