分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
プッシュプル型アミノナフチリジン及びアミノキノリン誘導体を基盤とした可逆的酸塩基検出試薬の開発
松本 祥汰梅野 智大臼井 一晃唐澤 悟
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2022 年 71 巻 3 号 p. 119-131

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抄録

電子ドナー性置換基とアクセプター性置換基を導入した二環性アミノキノリン誘導体やアミノナフチリジン誘導体は,溶媒などの環境に応答して発光変化する特徴を有し,プッシュプル型発光物質に分類される.著者らはこれまでに,これらの誘導体を使って様々な外部刺激に応答した発光現象を見いだしており,本稿では外部刺激として酸塩基に応答する三つの誘導体について紹介する.酸応答性では,ジヒドロイミダゾナフチリジン誘導体の芳香族性の違いに着眼した検出試薬である.塩基応答性では,アミン類に対して特徴的に応答する二つの発光物質について報告する.1,5-ナフチリジン誘導体はアミン類に対して,励起状態で錯体(エキサイプレックス)を形成し長波長発光を示す.もう一つは,アミノベンゾキノリン誘導体とHClとで生じる塩酸塩についてである.この塩酸塩はアミノ基のドナー性が失われるため無着色・無発光性を示すが,アンモニアによって脱塩し呈色・発光が回復する.以上,酸塩基に対して応答する3種類のプッシュプル型発光物質についての報告であり,これらは応答前後で大きく化学構造が変化しない特徴があり,再利用可能な検出試薬として分類できる.

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© 2022 The Japan Society for Analytical Chemistry
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