分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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イミド誘導体化を組み合わせた熱分解GC/MS法による無水マレイン酸共重合体の定性分析
石塚 圭柿内 俊文
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2022 年 71 巻 9 号 p. 517-522

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抄録

酸無水物モノマーはα-オレフィンを有するモノマーと共重合することにより,ポリマー中の架橋点として機能するなど,重要な役割を果たす.酸無水物系ポリマーにおける機能発現メカニズムの解明には,酸無水物骨格の特定が重要となる.熱分解GC/MS法はポリマーを構成するモノマー種の特定に適した手法であるが,酸無水物モノマーは熱分解によりCO2としてフラグメント化するため,その構造情報を読み解くことが困難であった.本研究では,無水マレイン酸共重合体試料3種において,酸無水物骨格を保持した構造情報の取得を目的に,一級アミンによる誘導体化の前処理を検討した.アニリンを用いたイミド誘導体化と熱分解GC/MS法を組み合わせることで,N-フェニルマレイミドの熱分解フラグメントとして無水マレイン酸モノマーの骨格情報を取得することに成功した.また共重合モノマーを含む熱分解フラグメントも検出されることを確認した.本報のイミド誘導体化─熱分解GC/MS法により,酸無水物系ポリマーの判別分析が可能になると期待される.

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© 2022 The Japan Society for Analytical Chemistry
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