分析化学
Print ISSN : 0525-1931
アナリティカルレポート
最近の国内市販植物油に含まれるトランス脂肪酸組成の調査
飯田 泰浩髙木 繁行深澤 透重松 康彦板橋 豊
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2024 年 73 巻 1.2 号 p. 45-52

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抄録

最近の食用植物油に含まれるトランス脂肪酸の現状把握を目的として,市販植物油中のトランス脂肪酸の含有量と組成を明らかにし,主に植物油から造られるマーガリン及びファットスプレッドと比較した.分析した食用植物油24銘柄のトランス脂肪酸含有量は平均1.32 g 100 g−1であり,総脂肪酸に占める割合は1.43% であった.トランス脂肪酸含有量の特別に多い銘柄が1点認められたが,それを除くとトランス脂肪酸の割合は平均0.92% であり,最近の家庭用マーガリン(0.88%)及びファットスプレッド(0.90%)と同程度であった.主なトランス脂肪酸は,リノール酸(9c,12c-18 : 2)とα-リノレン酸(9c,12c,15c-18 : 3)の二重結合の一つがトランス化した異性体(混合物)であり,その組成はマーガリンとファットスプレッドのトランス脂肪酸とよく似ていた.このことから,家庭用マーガリン及びファットスプレッドに含まれるトランス脂肪酸の多くが,原料の植物油由来であることが推察された.

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© 2024 The Japan Society for Analytical Chemistry
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