分析化学
Print ISSN : 0525-1931
73 巻, 1.2 号
年間特集「分」
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
年間特集「分」: 総合論文
年間特集「分」: ノート
年間特集「分」: アナリティカルレポート
  • 鈴木 彌生子, 佐藤 里絵, 澤田 桂子, 高嶋 康晴
    原稿種別: 年間特集「分」: アナリティカルレポート
    2024 年 73 巻 1.2 号 p. 17-21
    発行日: 2024/01/05
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    SDS-PAGEによる白餡の原料豆判別法の開発に向けた予備的検討として,白餡に使われる主な原料豆である手亡,バタービーン及びベビーライマから作製された白餡について,抽出したタンパク質画分をSDS-PAGEに供することで,白餡の原料豆判別の可能性を検討した.検討の結果,手亡,バタービーン及びベビーライマの各々に特徴的なバンドが見られることが分かった.また,手亡白餡とバタービーン白餡及び手亡白餡とベビーライマ白餡を混合した模擬餡においても,手亡,バタービーン及びベビーライマの各々に特徴的なバンドを検出した.定量的な解析を行い,統計的な検定結果を踏まえたうえ,判別マーカーとしての有用性を判断する必要があるが,SDS-PAGEを用いることで,白餡の原料豆判別の可能性が示唆された.

報文
  • 満塩 勝, 吉留 俊史
    原稿種別: 報文
    2024 年 73 巻 1.2 号 p. 23-29
    発行日: 2024/01/05
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    側面に金を蒸着した直径2 mmの石英ガラス棒によるシンプルな構造を持ったSPRセンサーにおいて,その表面を酸化グラフェン層で被覆したセンサーの応答特性について研究を行った.エタノール水溶液による評価では無修飾よりも少し感度が向上する結果が得られた.これに対しカフェイン水溶液については大幅に感度が向上し,無修飾のセンサーでは測定が不可能な低濃度のカフェイン水溶液の測定に成功した.また,被覆回数と増感の間には最適値が存在し,本研究の条件では5 mg mL−1の酸化グラフェン水分散液による5回の浸漬と乾燥を繰り返した被覆膜において最もよい感度を示すことが分かった.本研究により,酸化グラフェンを被覆したガラス棒SPRセンサーはカフェインに対して高い感度を示し,食品分析にも応用できる新しいセンサーとしての可能性を示唆することができた.

技術論文
  • 山﨑 絵理子, 谷保 佐知, 羽成 修康, 三木 芳恵, 金子 蒼平, 山下 信義
    原稿種別: 技術論文
    2024 年 73 巻 1.2 号 p. 31-37
    発行日: 2024/01/05
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    土壌中ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)処理技術開発の一環として,ライシメータ試験を行い,土壌浸出水中のPFASをISO 21675を用いて測定した.具体的には液状活性炭をライシメータに注入することでPFASを吸着できるバリアを土壌中に作成し,添加した河川水中のPFASの拡散を防止できるかどうかをライシメータ浸出水中PFASの多成分分析により評価した.その結果,短期間の試験結果ではあるが,液状活性炭注入技術により多くのPFASについて土壌中安定化効果の可能性が示唆された.また,吸着剤の性能だけではなく,土壌中での吸着剤の分散過程がPFASの吸着・安定化に影響することも明らかになった.粒子吸着性の高いペルフルオロスルホン酸類(PFSA)と水溶解性の高いペルフルオロカルボン酸類(PFCA)は土壌中挙動が大きく異なること,土壌中の有機態炭素量がPFSAの移動速度に影響する可能性があること等がわかった.これらの結果は国内土壌黒ボク土のPFAS汚染の環境修復技術開発においてISO 21675に代表される高精度多成分分析による有効性評価が必須であることを示す貴重な知見である.

ノート
アナリティカルレポート
  • 飯田 泰浩, 髙木 繁行, 深澤 透, 重松 康彦, 板橋 豊
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2024 年 73 巻 1.2 号 p. 45-52
    発行日: 2024/01/05
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    最近の食用植物油に含まれるトランス脂肪酸の現状把握を目的として,市販植物油中のトランス脂肪酸の含有量と組成を明らかにし,主に植物油から造られるマーガリン及びファットスプレッドと比較した.分析した食用植物油24銘柄のトランス脂肪酸含有量は平均1.32 g 100 g−1であり,総脂肪酸に占める割合は1.43% であった.トランス脂肪酸含有量の特別に多い銘柄が1点認められたが,それを除くとトランス脂肪酸の割合は平均0.92% であり,最近の家庭用マーガリン(0.88%)及びファットスプレッド(0.90%)と同程度であった.主なトランス脂肪酸は,リノール酸(9c,12c-18 : 2)とα-リノレン酸(9c,12c,15c-18 : 3)の二重結合の一つがトランス化した異性体(混合物)であり,その組成はマーガリンとファットスプレッドのトランス脂肪酸とよく似ていた.このことから,家庭用マーガリン及びファットスプレッドに含まれるトランス脂肪酸の多くが,原料の植物油由来であることが推察された.

feedback
Top