2025 年 74 巻 1.2 号 p. 37-43
尿中のナトリウムイオン・カリウムイオン濃度比(Na/K比)は,食塩や野菜・果物の摂取量を評価する重要な指標であるが,従来の測定方法は手間がかかり,日常利用には適していない.本研究では,Na/K比を簡便かつ迅速に測定できる「P-Scanナトカリ」を開発し,その妥当性を検証した.P-Scanナトカリは,ナトリウム,カリウム,塩化物イオンの三つの固体接触型イオン選択性電極と小型測定器で構成されている.実際の尿検体を用いた測定では,全自動分析装置で測定したナトリウムイオンと塩化物イオンの濃度に高い相関が確認された([Na+]=0.972[Cl−],R2=0.976).この関係を利用し,P-Scanナトカリでは対極に塩化物イオン電極を用いることで,ナトリウムイオン電極の電位差とカリウムイオン電極の電位差から尿中のNa/K比を算出した.その結果,P-Scanナトカリで得られたNa/K比は全自動分析装置と良好な相関(97検体の直線回帰式: y=1.218x−0.464, R2=0.736)が得られた.