1962 年 11 巻 4 号 p. 426-431
ポーラログラフ法により微量金属の定量を行なう場合の妨害元素の分離除去, および目的金属の濃縮を目的として有機溶媒抽出法を適用する方法につき基礎研究を行なった.まずキレート剤ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)の分解法につき検討したのち,タリウム(I),タリウム(III),鉛,カドミウムおよびビスマスのDDTC-クロロホルム抽出法について,pH2~13 間の抽出率を決定した.その結果シアン化カリウム,アンモニア水共存の影響はほとんどないが,EDTAのマスキング効果はタリウム(I),カドミウム,鉛についての抽出の際に顕著に示されることを確かめた.すなわち,定量的に抽出される pH範囲がタリウム(I)については pH 5~8間,カドウムについては pH5~6間,鉛についてはpH4~5間のようにEDTA不存の場合に比べてかなりの変化がみられる.更に補助キレート剤,クエン酸ナトリウム,酒石酸ナトリウム,リン酸ニナトリウム,グリココールがおのおの EDTA に添加された溶液からでは,タリウム(I),カドミウムについての定量的に抽出される範囲は EDTA のみ共存する場合に比べpH1.5以内の変動を生ずるだけであるが,鉛についてはクエン酸ナトリウムあるいは酒石酸ナトリウムがEDTAと共存する溶液からでは最もよく抽出されるpH4でも抽出率が50~70%に減少する.