1964 年 13 巻 11 号 p. 1140-1142
チオシアン酸によるモリブデンの定量における共存金属イオンの影響を考察した.
いま金属イオンの酸性の強さは,陰イオンとの結合力の強さを表わしているものと考えられるので,チオシアン酸錯塩における金属イオンの酸性の強さと,その吸収帯および発色の強さとの関係を調べて見ると,一般に酸性の強い金属イオンの錯塩ほど,
i)吸収帯がより浅色的である.
ii)発色の強さが大きくなる(より濃色的である).ということがわかった.
したがってモリブデンの定量の際,共存金属イオンの影響の大きさの順序は,おのおのの金属イオンの酸性の強さの順序であることを明らかにした.
これらのことは,チオシアン酸による金属イオンの定量の適否,あるいは共存物質の影響の推定に利用するとができる.