抄録
微量のレニウムを扱う際,低濃度のレニウム標準溶液の濃度が時間の経過とともに器壁への吸着その他によりわずかずつ減少するので,ときどき濃度の標定を行なう必要がある.しかし,低濃度のために重量法は使えないので,比色法によるのが適当である.最も普通に用いられるのはとう黄色のチオシアン酸錯体の比色であるが,従来のどの文献に見られる条件でも,長時間を要しながら安定な着色が得られない.
著者らは,錯体の生成条件について検討した結果,試薬の量によって,波長378mμに最大吸収をもつ錯体が生成し,これは従来比色に用いられている420mμ付近に最大吸収をもつ錯体と異なり,時間的にきわめて安定で,かつその吸光度がレニウム濃度に比例することを見いだした.本条件によって0~12ppmのレニウムを正確に定量できる.