分析化学
Print ISSN : 0525-1931
充てん剤混合法ガスクロマトグラフィーによるピークの定性
混合固定相によるガスクロマトグラフィーに関する研究(第14報)
三戸岡 憑之
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1972 年 21 巻 11 号 p. 1437-1446

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抄録

極性の異なった固定相液の充てん剤2種類を任意の割合で混合した組成の異なる通常の単一流路カラム,またはこれらを並列に組み合わせ,1成分の保持に関して複数個の情報が同時に得られるようにくふうした多流路カラムを用いた充てん剤混合法ガスクロマトグラフィーによるピークの定性確認法を検討した.その結果,全流路でのn-パラフィンの保持時間が一致するように流路ごとにキャリヤーガス流量を調整した多流路カラムを用いれば,単一流路カラムよりも,各ピークの保持時間から保持指標と固定相混合組成(液相の重量分率)の関係を示す直線のこう配と切片を容易に知ることができ,またこのこう配と切片の積が分子の大きさに関係なく化合物タイプのみによって決まるので,これにより不明ピークを同定できることがわかった.この積を化合物指標と呼んだ.また低極性側液相にシリコンラバーを用いた混合系の切片あるいはこの液相の単一カラムにおける保持指標から成分の沸点を約±10℃の誤差で推定でき,さらに切片は分子の大きさにも関係するので,これが同定に有効な情報の一つになることが明らかになった.この方法を市販試薬中の不純物の同定に適用したところ,微量成分でも保持挙動の追跡が容易で定性確認が可能なことがわかった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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