1972 年 21 巻 11 号 p. 1471-1478
コールタール中の多環芳香族炭化水素に対する分析法について研究した.その結果,コールタール中の多環芳香族炭化水素の液相分配法による抽出→抽出物の二層二次元薄層クロマトグラフィーによる分離→各分離スポット抽出物の分光けい光分析の手続きからなる分析法を見いだした.
本分析法をコールタールに適用した結果,93種の多環芳香族炭化水素類の存在を薄層クロマトグラフィーにより認め,そのうち,24種を分光けい光分析法により同定した.また,同定物質の中に,発がん性物質が10種含まれていることがわかった.
このほか,コールタール中に含まれる13種の多環芳香族炭化水素の定量を行なった.その結果,たとえば発がん性を有するベンゾ(a)ピレンは7400ppm,ジベンゾ(a, h)ピレンは120ppm,ジベンゾ(a, i)ピレンは270ppmときわめて多量存在することがわかった.