抄録
逐次錯形成反応を用いる滴定はその反応系中に共存するすべての化学種の化学量論的関係を考察する必要がある.しかしその関係を示す式は複雑となるため応用されることが少なかった.しかし,定められた条件下では存在する化学種の数が限定されるので,それらの化学種の濃度を選択的に定量しやすいcomplementary tristimulus colorimetry(CTS法と略記)を用いて反応系を考察した.
CTS法により吸収スペクトルから共存する化学種の数や組成についての検討を行ない,最多配位数の錯体と遊離の錯形成剤のみが共存する条件を求めた.この条件下で一定量の錯形成剤を2回滴下し,共存する化学種の相対強度の変化を定量的に考察することにより,金属イオンの濃度を求める式を簡易な形で誘導し,滴定を行なった.
本法により,1.27μg/mlの銅(II)をキシレノールオレンジで滴定し,相対誤差2.7%以下で定量が可能であった.