分析化学
Print ISSN : 0525-1931
ベンジルキサントゲン酸塩を用いる鉄(II)及び鉄(III)のクロロホルム抽出
林 謙次郎佐々木 義明田頭 昭二田中 伴子今田 恵子
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1979 年 28 巻 2 号 p. 106-110

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抄録

鉄(II)及び鉄(III)はいずれもベンジルキサントゲン酸カリウム(Kbex)と反応して水には難溶であるが,クロロホルムには可溶の黒かっ色錯体を形成し,クロロホルム中ではともに560nmに吸収極大を持つ同一の吸収スペクトルを与える.Kbex濃度5×10-3 mol dm-3以上で,鉄(II)はpH5~7で,又,鉄(III)はpH3~4でそれぞれクロロホルムへ定量的に抽出される.クエン酸塩共存下における,鉄の分配比とbex-濃度との関係から,鉄(II)及び鉄(III)のいずれの抽出においても抽出化学種として[Fe(bex)3]が推定された.鉄(II)の場合には,空気による鉄(III)への酸化過程を経て[Fe(bex)3]が形成されるものと考えられる.[Fe(bex)3]の全生成定数,クロロホルムへの分配係数及びクロロホルム中での560nmにおけるモル吸光係数として,それぞれ1013.9,103.0及び1.17×103の値を得た.鉄(II)及び鉄(III)とKbexとからそれぞれの錯体を合成・単離した.得られた錯体はいずれも[Fe(bex)3]の組成を持つと推定され,溶媒抽出法により得られた抽出化学種に対する推定組成と一致した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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