1982 年 31 巻 1 号 p. 27-32
無炎原子吸光法における原子化装置から排出されるガスを分析し,鉛の定量に際してみられる塩化物の干渉効果との関係を調べた.原子化装置の分析管にタンタル管を使用すると,通常の黒鉛管に比較して鉛の定量における塩化物の干渉が低減する.この原因を調べるために分析管の加熱時における排出ガスを質量分析法によって分析したところ,タンタル管では550℃付近から水素が検出され,2000℃付近では黒鉛管の10数倍程度の多量に存在することが認められた.黒鉛管,モリブデン管及びタンタル管について,水素10%を含むアルゴンを送気ガスとして鉛に対する塩化物{塩化マンガン(II)}の影響を調べた結果,水素を含む場合には塩化物の干渉が低減することが認められ,タンタル管における干渉低減効果は同管において発生する水素による効果と考察された.